※花井×女体化田島
※NL
※付き合ってる二人







ぶたれた方がよっぽど良かった。


「怒ってんの」
「…」
「なんで黙ってるの」

わかれよと言わんばかりに、ちらりと目を向けた花井を睨んだ。気持ちは言葉にしなきゃわからない。花井はあたしをワガママだと言うけれど、本当にワガママなのはいつだって花井の方だ。

「あたしが三橋と出かけるの嫌なら言ってよ」
「…言ってどーすんの。言ったらお前、やめるの」
「やめるよ」
「やめろよ、そういうの」

ぐ、と眉を寄せて花井が言った。この話はもうおしまい、そんな風に。でも、それって、ホントはどっちなんだよ。あたしには花井の言葉がわからない。常識とかそういうもので塗り固められた奥の奥の本音はどこにあるんだろう。
奥歯を噛み締めてセーラー服のスカートを掴んだ。せっかく目の前に花井がいるのに、あたしは白くなった拳ばかりを見ている。何やってんだろ。何やってんだろ、あたし。
目の奥が熱くなる。泣くのは卑怯だと心が言うので、ぎゅっと目を瞑ってその波をやり過ごす。心臓がぎゅっと軋んだ。

「そうやって、我慢ばっかして、嫌になったらどうすんの」
「嫌にならねーよ」
「未来なんかわかるもんか」

あたしがそう言うと花井は一瞬だけあたしの目を見て、それからさっと逸らした。厚めの唇がきゅっと中心に寄っている。出てくる言葉を噛み締める、唇を噛むのは、花井の癖だった。睫毛が影になる。丁寧に作られた花井の体、あたしにはわからない思考の数々。あたしとは違う大きな体を食べてしまいたい。理解したいのに。
そうやって、二人が終わる日にだって、俯いて唇を噛んでいるつもりなんだろうか。

「怒ってよ」

いくらでもぶっていいんだ。叩かれずに離れられるくらいだったら、もっとたくさん喧嘩したい。いくらでも、あたしは花井のものなんだから、傷跡くらい残してよ。



天使なんかじゃない
20110522/花井と悠
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