(神様、ごめんなさい)


上に覆い被さる田島のこめかみから汗が伝って俺の胸に落ちる。二人とも裸で必死になって息をしてぐちゃぐちゃ絡み合ってる様子は端から見たら滑稽だろう。なんて正しくない光景だ。俺と田島が歪に一つになった時、この身長差では田島の顔は俺の胸の上あたりにある。田島はいつもそれを死ぬほど悔しそうにする。

「キス、したい」
「ん、」
「花井、キス」

俺は田島にねだられるのに弱い。力の入らない腕でなんとか上半身を軽く持ち上げてキスをする。田島の両手が俺の太ももを抱えたまま体がこちらに倒れてきて、結合が深くなる。出てしまいそうになる声を喉で押し潰した。

「こえ」
「ん、ん」
「聞きたいって」
「ん、」
「花井」

聞かせてよ、と言いながら田島が俺の唇を舐める。汗で湿った肌と肌がくっついて気持ちがいい。ひやりとしているのに奥には暖かみがある。あぁ、人間の体だ。

(神様、ごめんなさい)

「…聞いてるの」
「…聞いて、る」
「うそ。シューチューして」

田島が眉間に皺を寄せてじりじりと焦がしたような目で俺を見た。そんな表情は初めて見る。セックスというものに子を成す以外に意味があるのだと初めて知った。田島が近い。

(神様、ごめんなさい)

田島が俺の太ももを押して体を更にぴったりと押し付けてくる。俺はそう柔らかくないので辛い体勢だがそれよりも結合部に走った快感が勝った。目を見開いて堪えきれなかった声を漏らすと、田島が俺の反った喉をべろりと舐めた。どうしようもない身長差を埋めようと田島が必死に伸びて俺を見つめてくる。目線より少し下にある、常より激しい色を持った瞳を見つめ返した。

「ねぇ、さっきから、何考えてんの、何見てんの、俺だけ見て、俺のことだけ考えて、他のことなんて考えないで。
花井は今 全部 俺のだよ」

ぎらぎらと光る目が言う。確かめるように、脅迫するように、懇願するように言う。田島はきっと俺のことを好きでいてくれてるんだろう。でもごめんな田島。やめられないよ。お前を愛しているけれど、俺がお前を手に入れている瞬間が、たまらなく恐ろしいよ。何回だって言う。神様、ごめんなさい。野球のために生まれてきた子どもを、愛してしまって、ごめんなさい。




ハローベイビー
0626/田島と花井

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