「天使みたい」

田島がわけのわからないことを言うのはいつものことだったけれど、今日はいつにも増してわけがわからない。俺は練習試合後の電車の中で揺られる田島の横顔をちらりと見る。田島の目線は窓の外へ真っ直ぐと向いていた。
ちくしょう聞いてしまったら相手をしなくてはいけないような気がしてしまう。俺も随分と田島にほだされている。

「…なにが」
「あそこ、天使とか神様でてきそーじゃね?」

案外シンプルに説明した田島の指した先には雲の隙間から光が漏れる夕焼け空が見えた。何と言うか、ロマンチックな。ついでに田島には似合わない感傷的な。けれども何重にも重なる白とオレンジの雲と、そこから不思議な色をした光がさす光景は確かにきれいだった。

「ま、きれいだな」
「でしょー」

ニヒヒ、と田島が笑う。それを見つけたのがまるで尊い仕事でもあったかのように。いや、違うかな、お宝を見つけた犬だ。ここ掘れワンワン。試合のときとうって変わって犬のような子どものような田島を見ると俺は幾らか安心する。男子高校生に向ける言葉ではないけれど、可愛く思う。それを情けないと思ったりもする。

「良かったな」

そう言ってぐしゃぐしゃ頭を撫でると田島は何故か照れくさそうにうん、と言った。変なやつだなぁと思う。でも、毎日追いかけるのがあんなにも苦しいのに、辛いのに、野球から離れた田島をいとおしいなぁとも思う。田島がこちらを真っ直ぐ見ている。

「天使みたい」



見えない神様
100512/田島と花井
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