メンドイ、と突っ張った先輩の顔を見つめながら更に腰を低くしてお願いする。お願い、と言えばビー玉みたいな綺麗で大きな目をチラリと動かしてこちらを見る。すぐに逸らされちまうんだケド

「丸井せーんぱい」
「だから嫌だってば」
「なんで?」
「面倒だし面倒だし、…面倒だし?」
「つまり面倒なのかよ」
「ビンゴ」

それからまたフーセンガムをふくらましてテレビのチャンネルを探す。ちなみに今は俺ん家で丸井先輩とゴロゴロ。せっかく俺は部活もねぇし久しぶりに先輩と一緒だし色々張り切ってたのに一方先輩は"メンドイし"と言い放って、結局お家デート。先輩と二人で居れるのは嬉しいけどそんなに素っ気なくされたら赤也くんサミシーイー、いや、冗談じゃなく結構マジな話。



「男のロマンなのに」
「へー、」


パチンとガムが割れる音がした、何千何百回この音聞いたんだろうなー、とか考えながら先輩の腰の辺りに手を回してみる。先輩は動かないでまたガムを噛みながらテレビを見ていらっしゃるんだけど。なんかマジ寂しくなってきた。

ぎゅーって音が出るぐらい抱き付いても先輩はスルースキル発動、数ヶ月前の初々しい先輩はどこに行ってしまったのだろうか、カムバック丸井先輩!




「俺拗ねるよ」
「拗ねるな赤也、お前は強いワカメの子なんだから」
「いや、ワカメの子じゃねえし」
「もじゃもじゃ」
「さらさら」
「赤也のバーカ」
「丸井先輩のバーカ」
「赤也のワカメ野郎」
「丸井先輩の食いしん坊」




チャンネルを握り締めながらぐでーって俺の上に倒れ込んで来た先輩は俺の上で一回伸びる、いや、重いし。何この子豚



「欲しい?」
「うん」
「どうしても欲しい?」
「どうしても欲しい」
「あー、どうしよっかな」
「それか丸井先輩でもいいよ」
「馬鹿じゃねぇの」
「へいへい」


仕方ねえな、って俺の頭を無造作に撫でてから よいしょ って立ち上がった丸井先輩はもう一度大きな伸びと欠伸を一つ。俺はボケーッとそんな先輩を見つめながらソファに寝っ転がったまま。俺のマフラーどこ?とか言いながら色々荷物が重なった場所をぐしゃぐしゃにしながら探してたり、そんな丸井先輩見て可愛いなー、とか変な事考えてんのはモチのロンで秘密。

パチンと携帯を開くと指す日付は
2月14日。それもまた女が男にチョコをあげるトクベツな日らしくて毎年女子がきゃっきゃきゃっきゃしてる。その分男子はソワソワしてるんだけど(確か真田副部長の髪型がちょっと変わってた気がする。あれ何なんだろう)



「どっか行くの?」
「んー、おう。」
「どこ?」
「あそこの角のスーパー」
「へー…」
「欲しいんだろぃ?バレンタイン」


バレンタイン、バレンタイン、バレンタイン、バレンタイン、俺のアタマの中で永遠にエコーされるんじゃないか、と思ったその単語は除夜の鐘だっけ、あんな感じでゴーンゴーン、って数秒響いていた
慌ててソファから立ち上がってジャケットと先輩とお揃いのマフラー首に巻いて、そのまま待ってる丸井先輩にダイブする




「丸井先輩スキ、ダイスキ。」
「ンだよ、急に」
「だってマジくれないと思ったし」
「…教えてやるから一緒に作ろうぜ」


少し低い位置にある先輩の肩に頭を埋めるのももう慣れっこだ、そのままその中3男子にしては少し小さな手を俺の背中に回す。その仕草にも慣れっこだ。チョコ作り終わったらナニしよっか、って小さい声で言ったらドスって背中叩かれた。多分照れてるんデショ。ああああもう何この人本当に可愛い。可愛くてもう手離せない。


「ずっとこの先も俺に作ってね。」
「お前にやるのなんて俺ぐらいしかいねーんじゃねえの?」


笑いながら話す丸井先輩の全部が好きで好きで大好きで、仕方無くて、丸井先輩になら俺の全部かけて一生死ぬまで守ってやりてー、とか思う。つまりアレ、相思相愛ラブ注入?なーんちゃって。
多分来年も再来年も丸井先輩が作ったチョコ食ってる俺が目に浮かぶし、俺の為に頑張る丸井先輩だって目に浮かぶ。うわ、幸せだな、とかまたニヤケて先輩の事ちょっと痛いぐらいまた抱き締めた。痛い、って笑う先輩がまた俺の背中抱き締めてきて、こういうのが幸せなんだなぁって


「つーか俺以外に作んな」
「へいへい、てかお前以外にあげるヤツ居ねーから心配すんな」



全部食わないで机の引き出しに入れときてえ、先輩の愛。数え切れないぐらい溜まるんじゃねーのかな。


そう考えながらまたキツいぐらい細い身体を抱き締めた。







Happy valentine!

20110206
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -