軒下から滴るしずくをひとつ、ふたつと数えた。意味はない。ここのつ。銀時はひとつばかり瞬きをして、その行為を止めにした。どうしようもなく面倒だった。だからと言ってどうにかなる何事かもなく、銀時は横目に高杉を見遣った。真っ白い包帯に覆われた横顔は微塵も揺るがないでいて、ああでも、こんなものなのだろうなと寂寥のひとつもなく、それはいやにすとんと心のどこかに落ち着いた。雨に濡れて重たげな袖から垂れ下がる手は、曇天の薄暗がりの中で青褪めてさえ見えた。血色の悪い掌は冷たそうだった。いつ、こうなってしまったのだろうか。そんなことばかりを考えても、雨脚は一向に弱まる気配を見せやしない。雨に打たれて冷え切った掌を暖めてやることすらできもせずに銀時は軒下から滴るしずくをひとつ、ふたつと数えた。意味はない。ここのつ、とお。少しばかりの溜息をこぼした。遠雷はまるで他人事のような顔をして大気をふるわせた。






100609
雨宿りなう