起きたらどこかふわふわとした倦怠感と、あと少しばかり頭がぐらぐらしていた。のろのろと瞼を上げると、もうすぐ近くに怖い顔をした滝の顔があったものだからちょっとびっくりだった。

「…たき?」

 しかめっつらをした滝はますます眉間の皺を深くして私の頬を両手で包んだ。その手がやけに優しかったものだからちょっと意外だった。滝が優しいことは知っているのだけれど彼は照れるのやら、ちょっとばかり乱雑ででもあったかいのが常だった、のだけどなあ。「泣いていたぞ」へえ。

「三木が?」
「なんでだ」
「じゃあタカ丸さんだ」
「馬鹿、お前だ」

 額を軽く打ったてのひらはぺしり、と間抜けな音を立てたが、きっと私の方が間抜け面を晒しているのかもしれない。が、もしかしたらいつも通りなのかもしれない。ふむ
「滝の方が泣きそうな顔をしているのにねえ」
 そう言うと滝は少しびっくりした風に目を丸くして、それからぐしゃりとご自慢の顔をゆがめた。

「誰のせいだ馬鹿」

 馬鹿馬鹿と、まったく失礼な。そんなに言われるとそんな気がしてきてしまうじゃないか。なんだかやけに重たい瞼が気になったので二度寝ようと思う。横になったら滝が怒った。「寝るな馬鹿!」だから馬鹿馬鹿と…






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