白い部屋だった。白い部屋だったが赤すぎて普通にいやになった。大きい窓は夕陽を受け入れすぎるのだ。俺はそこを立たなかったけど。俺はただぼんやりと膝を抱えていた。普段ならなにも言わずに傍にいてくれる相棒の青い体躯も見当たらなかったが俺はなんの疑問も湧かなかった。むしろなにも湧かなかったと言う方が正しいのかもしれなかった、が。ぼんやり、ぼんやりとしていただけだった。そのうちに、ノックの音が聞こえて初めて俺はこの部屋にドアがあったことに気付く。音の方に目をやればぽかりと浮かぶようにドアノブがあった。本当はドアすら真っ白かっただけの話だ。しばらく見てたら壁との境界線が黒い溝になって見えた。ほどなくしてドアが開く。古いらしい蝶番の悲鳴すら飲み込む声で「デンジいるかー!」うっせ。赤い部屋に赤いアフロ。んだこれんだこれ、鬱陶しい。そう思ってからの俺の動きは早かった。のこのこと近づいてきたアフロの腕を引っつかんで引き倒す。アフロはなんの抵抗もせずに俺に組み敷かれた。俺はアフロの腹に乗っかったけれどアフロはなぜだかへらへらと、腹が立ったのでなんとなく首を絞めてみた。意味も意図もない、なんとなくだ。普段ならそんなことは発想もしないんだろうが(だって俺はいわゆる常識人だからだ。言うまでもない)その行動に至るまでの俺の思考は実になめらかだった。アフロは抵抗しなかった。ただ少し苦しそうに床に爪を立てたのだけ見えた。

「苦しいんなら俺を突き飛ばすなり俺に爪立てるなり、できんだろ」

 アフロは嫌味ったらしく、訳わかんない自信に満ちた様子で口角を上げて、にやりと、

「×××××」

 口から溢れたのは真っ赤な毛玉だった。ぷかぷか浮かんでったそれを目で追ってみたら、天井、に吸い込まれていった。なんじゃありゃと思って、俺はアフロ問いただすべく見下ろせばアフロは動かなくなってた。っていう夢。



「で、さあ、デンジ」
「なんだアフロ」
「アフロゆーなし」

 俺はソファーに座るオーバの脚の間でただ流れてくテレビ画面を眺めてた。あれ、俺なに見てたんだっけ。

「なにお前、俺を殺してーの?」

 すこし考えてから、いや、と言ってみる。そんなことはないはずだ。俺は結局テレビ画面から何にも見出だせずにオーバに一層寄り掛かる。オーバは惰性のように俺の腹に回した腕に少し力を込めた。ずり落ちないためなんだと思う。事実安定感を増したからきっとそうなんだろう。俺は顎を反らしてぐてりとオーバの肩に頭を乗せた。

「やっぱばかだろオーバ、よく考えてみろ」
「毛玉をか」
「ばーかちげーよばーか」
「2回言うな」

 抗議のつもりでかオーバは俺の首筋にくらいついた。あまがみ程度だが腹が立ったので殴った。そこそこいい音がしたが、まあそんな痛くないはずだ。

「考えろっつってんだろ、初心に返れ」
「あー?」

 実にめんどくさそうにして、肩口に顔を埋めた。奇妙に唸る声がすぐ近くで響くものだからくすぐったかった。

「いや、わからん」

 ギブアップははやかった。

「で、答えなに」
「ははは」

 教えるかばかめ。

「んだそれ」

 オーバはそう言って不満げにまた噛み付いてきた。お前はケダモノか。そんな間違ってはないはず。

「口から毛玉出せたら教えてやるよ」
「できるか」







100224
炉心融解/オデン