1時間前くらいにオーバが来た。姿は見えないけどぎゃいぎゃいと喚く声や悲鳴とかがするから、あの馬鹿は未だ新しいジムの仕掛けに四苦八苦しているらしい。あの頭の中は空なんだろう、触ればふわふわとやわらかいし、きっとそうなのだ。ずいぶん近いとこでする声にもうすぐか、と思った拍子にすっとんきょうな方へと遠ざかった。馬鹿が俺の名前を叫んでるが、無視だ。しばらく俺は手元の部品を弄ってみたりしていたのだが、なにげなくぷつりと切れてしまった集中力に眉をしかめて、結局工具を放り出した。まとめて俺の体も放り投げる。あー……。レントラーが鼻先で俺の額とか頬を突いてきた。

「暇だ、なあ」

 なにげなくレントラーの首に腕を回せばゆるく膝を折ったレントラーはごくごくやわらかい仕草で俺の唇を舐めた。お、なんか、恋人みたい。

「おまえなら、ずっと側にいてくれんのになあ」

 遠くで馬鹿が絶叫。「お前が呼び出したんじゃねーか!」知るかよばーか。






100211