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はあ、と吐き出した息は白い。
うずくまって、広場を見ている。
セイバーと士郎が、子供に混じってサッカーをしている。
「ふたりとも、元気だなあ…」
あまり運動は得意じゃないし、
寒いのはもっと得意じゃない。
『動けば温まる』とは言われたけれども、
風の冷たさにはどうしても勝てなかった。
「君は混ざらないのかね?」
隣にはアーチャーがいた。
「寒くてそれどころじゃないんです、…。
アーチャーさんは混ざらないんですか?」
「愚問だな。衛宮士郎と共に玉蹴りか」
「チビッコの味方にまわるのもアリですよ」
「…まあ、不毛な争いは好きではないな」
「そういう問題ではないと思いますが…」
はくしゅ、と小さなくしゃみが漏れた。
アーチャーはさりげなく、彼女の肩に触れた。
「…身体がずいぶん冷えている。このままでは風邪をひくぞ」
「そうですね、それはわかっているんですが、…寒くて」
「動けないのか、…」
やれやれ、と嘆息に続いて、ふわっと肩に温かい感触が。
それがアーチャーの黒い上着だと気付くのに、しばし。
「あ、あ…ありがとうございます。あったかい」
「サーヴァントは風邪はひかぬからな。さて、何か飲み物でも買って来よう。
何がいい?」
「え、あ、ええと…温かい、ミルクティーを。
…すみません。ありがとうございます」
「奢るのは君だけだ。では行ってくるとしよう」
黒い革の上着。
すこし、アーチャーの匂いがした。
(あったかい)
陽がさしはじめて、うとうとするのに、しばし。
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