薔 薇 色 の 地 獄 。 | ナノ
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同じ闇の中で【01】




―――――『龍頭抗争』。




ヨコハマ史上、最も血腥かったあの日々。

矢継ぎ早に担ぎ込まれてゆく、真っ黒い、死体袋。ひとつやふたつではなかった。それはもう、数えるのを諦めるほどに。


銃弾の雨、その音が止むことはなく。街はただただ廃墟であった。


そんな中。なまえは、片時も首領の側を離れなかった。


『首領を守る』という自らの使命を、なまえは、守るしかなかった。



…抗争が終結した翌日。なまえは、太宰と中也が、たったふたりで敵対組織のビルを壊滅させたと聞いた。

戻ってきた中也はひどく消耗しており、まともに話のできる状態ではなかった。

中也に意識が戻ったのはそれから三日後。『仇を討ち損ねた』と、中也は見舞いに来たなまえに苦々しく吐き捨てた。









「なまえさん、」

はっ、と我に返る。なまえの手には、万華鏡が握られていた。

「…敦くん。どうした?」
「国木田さんから連絡があったと思いますけど…」
「ああ、このあと会議だったな。心配しなくても、すぐ戻るが…、」
「…なまえさん、太宰さん、知りません?」
「太宰さん?…、」

携帯を手に取り、太宰の名前を開いてみても、聞こえてきたのは電波の届かないところか、電源が入っていないかを告げる、冷たい機械の音声だけだった。

「またどこかで死ぬ算段でもしているのか…」
「太宰さんの行きそうなところ、なまえさん、心当たりとかありませんか…」

心当たり、か。

万華鏡を棚に戻し、ふむ、と考える。

「川か、既に引き上げられてどこかの交番か、」
「そのあたりはもう見てきたんですよね。で、女性を心中に誘ってないかと…」

太宰さんの、行きそうなところ。

なまえは、もうひとつ心当たりがあった。

「敦くん、ここから少し歩くんだが、海の見える…見晴らしのいい、小さな集団墓地がある」
「お墓、ですか」
「わたしの心当たりは、あとはそこくらいだ」
「わかりました、行ってみます。…なまえさんは、来ないんですか?」

ひゅ、
少しだけ、息を飲んだ。


「、…うん。わたしは先に戻って、国木田さんに言っておくよ。どうせ太宰さんは、会議には出ないだろうからね」
「お見通しですか…」

はあ、とため息を漏らす敦に、なまえは、いつものことだ、と苦笑い。

「それじゃあ、行ってきます」
「ああ、行ってらっしゃい」

敦を見送り、なまえは探偵社へ向かう。



「…いい天気だ」

青空を見上げて、目を細める。


絶好の墓参り日和なのだろう。
きっと太宰さんはそこにいるはずだ。


なまえは、確信していた。






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