ねこのひ、ねこのひ。
黒い猫、だった。
赤い大きなリボンをつけて、
金の目がとても綺麗だった。
「…、…」
織田作は路地で、猫と出会った。
黒い猫。
誰かに似ている、と直感が告げた。
「…お前は、…なまえ?」
心当たりのある名を呼ぶと、
にゃお、と返事がきた。
「そうなのか?」
にゃあお。
「何かの異能の影響か」
にゃあ、にぁあ。
「そうか。なまえも大変だな」
にゃおん。
「太宰は元気か」
にゃあ、にゃあお。
「…織田作、何をやっているんだ」
「猫と会話」
「…、そうか」
背後からした声は、
織田作が猫に似ている、と思っていた人物。
なまえも黒猫を見る。
飼い猫なのだろう。
金色のまるい瞳がこちらを見ている。
「路地裏とはいえ、しゃがみこんで猫と会話か。
…織田作は、猫が好きなのか?」
「いや、特別に好きというわけじゃないんだが。
この猫が、なまえに似ていたからかな」
ふ、と微笑んで、織田作が立ち上がる。
「そう、か。わたしは猫か」
「黒猫だな。やはり、そっくりだ」
「猫より、わたしのほうが可愛いだろう?」
なんて冗談は、
「…いや、なまえは…可愛いというよりは、美人の類いだな」
真っ直ぐに、その天然さに殺される。
「…恥ずかしい台詞は禁止だ…」
「、どうした」
見事な返り討ち。
火照った顔が、悔しい。
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拍手お礼でした。
織田作と猫の日。
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