微睡は水面深く。 | ナノ
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得手勝手


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「協会に呼ばれた?」
「ああ。しばらくは留守にする」

「しばらくは、って…どれくらいですか」
「1週間はかかるな。帰るときの連絡はする」
「…そう、ですか」

晩御飯を終えたあと。
協会から召集がかかった、と神父は話し出した。

「名前、お前はついてくるなよ。かえって厄介なことになる」
「言われなくても解っています。…荷物、まとめるの手伝いますね」
「いや、私の荷物はいい。名前は自分の荷物をまとめておけ」
「え?わたしはついて行かないんですよね?」
「あのあと、衛宮士郎へ電話をしておいた。お前はしばらくは、衛宮士郎の家へいろ」

「、えっ?」



***



「あの小僧の家か」



荷物をあらかたまとめ終えたときに、その声はした。

「王…、」
「つまらぬ、くだらぬ。がまあ、組織の歯車とは不自由な身よの」
「王も、綺礼がしばらく留守になるのは寂しいですか?」

ぴくり、と端正な眉がつり上がる。

「寂しい…?我がか?」
「なんだか、綺礼がいなくなるのが不満そうでしたので」
「話し相手がいなくなるのは…一時的ではあれ、退屈にはなるな。
名前、お前も我から離れるのであれば尚更だ」

そっと、ギルガメッシュの指先が名前の髪の毛に触れる。
しゃら、と金属の揺れる音が、した。

「名前、お前は我の所有物だ。その意味はわかるな?」
「…申し訳ありませんが、わたしは生きている人間ですので、モノにはなれません」
「我にすべてを委ねれば良い。お前が他のことに心を砕いてはならぬ、と何度も言っているであろう?」

頭を撫でるギルガメッシュの手が、名前の頬に触れる。
ひやりとした雰囲気を持つ、赤い目とは裏腹に、
そのてのひらは温かかった。

「…わたし、は、」


名前は、ギルガメッシュの手に、そっと自らの手を重ねた。

「わたしは、あなたと同じくらいに、ランサーも、綺礼も、大切です。
3人がいてくれたから、わたしは、こうして生きているんです。
…わたしは、……、」

触れている、名前の手は、少し震えていた。


「……我と、綺礼と、あの犬が。お前には同列なのか…。
………、まあ良い。いずれ名前よ、お前は我の所有物になり、我だけを見るようになる。
ゆめゆめ、忘れるでは無いぞ」

「、王…」

「我が許す。名を呼べ」



「………、ギル、ガメッシュ…、」





「…良い子だ。人の子よ」




今までに聞いたことのない、穏やかな声だった。

その声に引き寄せられるように、名前は、ギルガメッシュに抱き寄せられた。


「……、王?」


「…お前は、我の前から勝手に消えてはならんぞ」



「あの、……」
「独り言だ。忘れよ」


「…はい、我が王よ」




小さい子をあやすように。

名前は、ギルガメッシュの背中にぽんぽん、と優しく触れた。




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時には弱くなっちゃうことも、あるかもしれない。

(リクエスト、ありがとうございました)


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