*memo* | ナノ




ストロベリー☆ナイト



「よう、お前も撮影だったのかよ」
スタジオで雑誌の撮影が終わり次の現場へと向かう途中
ふと目を向ければ見慣れた姿に蘭丸は普段はあまり崩す事の無いその
無表情を少しだけ緩めると目の前で足を止めた少女へと語りかけた。

「黒崎君…?お疲れ様です。黒崎君も撮影だったんですか?」
ふわりと軽く巻いた髪が揺れる。私服なのだろうワンピースは派手ではないのに
華やかに見えるのはやはりアイドルだからだろうか。
長い睫がパチパチと瞬きをするのをじっとまるで睨みつけるように見つめる
その小さな顔は相変わらずおっとりとしたそれで蘭丸は息を吐いた。

「お前ほんと相変わらずだな、俺は今撮影終わったとこだよ、んでこれからマスターコースの奴らの指導」
「…黒崎君も変わらないですよ?マスターコースってあの例の新人さんですか?」

シャイニング事務所とはシャイニング早乙女が社長を務め、才に溢れたアイドルが集う。
ふるいにかけられた少数の原石のみしか所属する事は許されないそこに所属出来た事は
今思えば幸運としか言いようがない。実力なんて言える程まだ自分に力があるとは思えないし、
まだまだ努力が足りないと、そこに所属するアイドルである自分はそう思う。七海春歌、昨年
アイドルとしては異例の、作詞も作曲も出来るアイドルとしてデビューしたばかりの新人である。
黒崎蘭丸とは同期であり、楽曲提供もしている事から打ち解けあい気軽に会話をするようになった。
何人かいる同期はとても個性が強く当時は付き合い方に悩んだりもしたけれど、今はもうそれが当たり前になりつつあるのだから
年月というものは早いものである。春歌は学生時代の事を思い出して苦笑いする。

「…とっとと片づけちまいてー」
「…他の皆さんも指導するんですか?」
「二人ずつ、カミュの野郎は一人だが、そいつが一番大変なんじゃねーの」

どうでもいいけどな。クッと笑いつつそんな事を言っているけれど、把握している事に春歌は心の中で笑いを押し殺す。
嶺二が心底嬉しそうに後輩を指導する様は想像しなくても見えてくる。
蘭丸が気だるそうにする様も想像は出来る。では藍はどうなのだろう。
そこのピッチ間違えてるよ。こんな音で僕が納得するとでも思ってるの?駄目駄目、君には才能なんてないよ。
無表情で、あくまで無表情で後輩をいびり倒す美風藍の姿も、想像が出来る。経験者としては二度と味わいたくない事ではあるけれど。
カミュが、後輩を指導する所なんて想像が出来ない。春歌はうーんと頭を抱えつつも蘭丸の前で百面相を繰り広げる。

「おい、お前大丈夫か?」
「……後輩さん、頑張れ、です!」

結論は結局はこのシャイニング事務所に所属するアイドルならば、道は自分で切り開けとしか言えないのである。
自分がそうであったように。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -