大学への進学を切っ掛けに、春樹は一人暮らしを始めた。
安く借りられたアパートの部屋は、『幽霊騒ぎが起きる』イワク付きの物件らしい。
サークルで出来た地元の友人が、そんな噂があると教えてくれた。
殺人事件が起こったわけでも、自殺があったわけでも、孤独死をした誰かがいたわけでもない。
それでも“それ”は起こるのだという。

(幽霊騒ぎねぇ…)

住み始めて二か月は経つが、よく聞くような怪奇現象にはまだ遭っていない。
――ただ…気になる変化は確かにあった。

(…でもこんなの、さすがに幽霊とは関係ないよな…)

きっと生活の変化のせいかも知れない。
それでも『おかしい』『変だ』と思うような事が、体に起きている。
生理現象と片付けるには、…夢精が多過ぎるのだ。
病気も疑ったし、欲求不満なのかと自慰をするが、なかなか達せない。
それどころか、信じられないことにお尻の穴が疼いて、勝手にひくつく動きをする。
下腹の内側が熱を持つような、――そんな症状に襲われ、春樹は怖くなった。

(俺は女の子が好きなんだよな…?)

高校の時には付き合っていた彼女もいたし、童貞だって捨てている。
セックスの経験はそれなりにある。
信じて疑わなかった性癖の変化に、春樹は気が滅入っていた。
同じ男に欲情するとは思えない。
けれどこの反応からすると自分が女側だ。

楽しみにしていた大学生活、気ままな一人暮らしなのに、落ち着かない。
春樹はどうしたものかと、頭を悩ませた。


――そんな不安を持て余していたある夜、春樹は答えを知ることになる。


■ □ ■ □ ■


ふ、と夜中に目を覚ました。
誰かに起こされたような気がしたが、うつらうつらと開いた目には、いつもと変わらない天井があるだけだ。
身動いで、眉を寄せる。

(……また…)

下半身が濡れている。
今夜も夢精をしてしまったと気が付いて、溜め息がこぼれた。
下着を穿き替えないと、と夢うつつに考えて、春樹は違和感を覚えた。

(…、?…、あれ……?)

布団はどこだろう。
寝相は悪くないのに、落としたのだろうか、何も掛けていない。
寒さを感じなくて不思議だった。
濡れた下半身に意識を向けた時、スウェットのズボンも、下着も、何も身に付けていない事に気が付いた。


「――…え…っ?」


睡魔が遠退いていく。
しっかりと眼を開いて視線を向ければ、下半身は丸裸だった。
両膝を立てて左右に開いた格好で、濡れた股間があらわになっている。

(…は…? な、なんで…?)

寝惚けて自分で脱いだのだろうか。
自分が気付いていないだけで、オナニーをしていたのだろうか。
困惑する春樹の膝が、突然、“何か”の力で大きく割り開かれた。


「っ、ひ……!!」


自分の意思じゃない。
膝に“何か”が触れて拡げたのだ。
目覚めて早々に起こった怪奇現象に、春樹は身を竦めて悲鳴を上げた。

ヌル…、

尻たぶに“何か”が擦り付けられる。
ぬめりを帯びたそれは、春樹のアナルに押し当てられた。

(なに、なに、これ、夢? うそだ、何が起こってんだよ…!?)

ヌ…、ちゅ、ヌチ、ヌチ、

擦り付けられる“ソレ”が、確かめるようにアナルの縁を拡げて入ってくる。
春樹は体を強張らせた。
見開いたままの瞳には何も映っていないのに、開いた膝を押さえ付けて、後孔を拡げていく“何か”がいる。

犯そうとしている“誰か”がいる。


「ま、まって…、イヤだ……ッ」


春樹は見えもしないその“誰か”を拒んで、手を振り乱し、身をよじり、抵抗した。
手首を掴まれる。
顔の横に押さえ付けられて動かせない。
じわじわと内側を拡げられていく感覚に、春樹は唇を噛んで眉を潜めた。


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