大学で出会って親しくなった友人たちが『パパ活』をしていた。
派手な見た目もしていない、異性との交遊関係の噂も聞かない、そんな子たちだったので驚いてしまった。

恋人でもない異性と定期的に会って、お小遣いと称してお金を貰ったり、食事を奢られたり、欲しいものを買ってもらう。
その見返りとして肉体関係を持つことに抵抗はないのだろうか。


「全く知らないおじさん相手にするより安全だし、今は彼氏もいないから」

「彼氏が出来たらやめるって言ってあるから、期間限定のお小遣い稼ぎにはなるんじゃないかな」

「そんなに時間とられるわけでもないし、我慢とかしなくても良いから気が楽だよ」

「おしゃべりだけの日とかもあるし」


さすがに周知されるものでもないので、声をひそめながらも教えてくれる体験談。
相手は金銭に余裕のある者ばかりなので、癒しを求められても、エスカレートして過激になることはない。
こちらの都合で関係を打ち切る時も、引き留められることはないらしい。

(…アルバイトしている様子もないのに、ブランド物とかいろいろ持ってるのって、こういう事情があったんだ…)

ブランドには興味はないが、苦学生ともいえる姫子には、金銭の問題は心惹かれた。
貞操観念を捨て切れるかどうか。
毎日、毎週、相手をする訳でもない。
アルバイト以外で得られるのなら、肉体関係があっても許容出来るかも知れない。


「何事も経験してみなきゃ良し悪しって分からないんじゃない? この事に関しては倫理観は除外されるけどね」

「姫子も興味あるなら紹介するよ。私のパパのお友達が探してるんだって」


――そういった流れで、姫子は『パパ活』の世界へと踏み込んだのだった。

紹介されたのは、二十歳ほど年上の会社役員で、既婚して子供も2人いるそうだ。
2人の関係は不倫という形になる。
もし相手側にばれたとしても、責任問題が姫子に振りかかることのないようにしてくれるらしい。
体の関係ありの月謝契約。
それに加えて諸費用はパパ持ち。
その場かぎりの援交とは違って、必ず定期的に貰えるお小遣いは嬉しかった。

1回目と2回目の逢瀬は、ただお互いを知るための時間にしてくれた。
高級店での美味しい食事、プレゼントされた服、驚くほど飲みやすいアルコール。
初めての経験ばかり。
3回目でベッドインしたが、荒々しさもしつこさもなく、トロトロにとかされるようなセックスだった。

(経験談を聞くに、私の“パパ”って、いわゆるアタリっていうやつなのかも)

同じ時間を過ごしても苦痛はない。
年上の男に対する嫌悪感もない。
お金も心も満たされる。
セックスも気持ちいい。
酸いも甘いも噛み分けた大人の男のエスコートは、経験の浅い若い女を逆上せてしまう。
姫子からパパ活に対しての戸惑いや不安、心の奥底にあった忌避感が消えてなくなるのも早かった。


「今度、旅行に行かないか?」

「旅行に?」


姫子が『パパ活』に慣れた頃を見計らったように、1週間の温泉旅行へ誘われた。
老舗の高級旅館、その離れを貸し切って過ごすのだという。
まさに酒池肉林。
質の良いものを食べて、飲んで、気ままに豪遊し、日夜も決めず肉欲に溺れて怠惰に過ごす。
ふしだらな時間の過ごし方だ。
期待と好奇心に駆られるまま、姫子は頷いていた。


■ □ ■ □ ■ □ ■


源泉かけ流しの内湯と露天風呂のついた離れは、情緒ある日本家屋ながら、リノベーションされた内装が美しい。
寝室にはクイーンサイズのローベッドが二台並んでいる。

そこで姫子は“パパ”と甘く熟れたような、爛れた時間を過ごしていった。

用意された海と山の幸に舌鼓を打ち、リビングにある小さなバーカウンターでパパが作ったカクテルを楽しむ。
露天風呂で触り合い舐め合い、光沢のある布団で上になり下になり体を重ねた。
時間も場所も関係なく、好きな時に食事を摂り、好きな時にセックスをする。

旅先の解放感が姫子を淫らにした。


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