――…ピピピピッ

何度めになるのだろう。
コンドームを付け替えた男が再びのし掛かってこようとしたその時、プレイ時間終了のアラームが鳴った。
姫子も客の男も、夢から覚めたようにはたと我に返る。

カーペットやテーブルに散乱したいくつもの使用済みコンドーム。
ソファやコスチュームにシミを作るほどの愛液とローション。
男と女の混じったいやらしい匂い。

着たままの「レディーススーツ」と男の「スーツ」はぐしゃぐしゃに皺がより、湿るほどすっかり汗で濡れている。
時間いっぱいまで繋がりあって、イキつづけた体は疲労感をまとっていた。


「…残念…もう終わりですね…。シャワーを浴びにいきましょう? お手伝いしますよ」


イメージ・プレイを楽しんだ客は、備え付けのシャワールームで体を洗って服を着替える事になっている。
汚れた衣装のままキャストもそれを手伝い、戯れとしてサービスでお掃除フェラをする時もあった。
お店に内緒で「お小遣い」をくれるお客さまもいるので、姫子もサービスで色々とする事が多い。
絶倫のような性欲の男はまだ物足りなさそうにしていたが、さすがに体力の限界であった姫子は、少しだけ手で「サービス」をして切り上げた。


「今日はありがとうございました。すっごく気持ちよくて楽しかったです! 次も指名してくれると嬉しいな。 ふふ、また来てくださいね」


満足げな顔をして帰る客を見送り、姫子は無事に一仕事終えたと、ほっと息をつく。
イメージプレイは興がノってくると、そのシチュエーションに感情移入して、役割(女)の心境に陥る。
ちゃんとコンドームを着けて行為をしているのに、生でされていると錯覚してしまう。
その時の緊張感がたまらない。

セックス好きの体は興奮して、濡れて、喜んでしまうから、うっかりするとプレイ中にシナリオを変えることもある。
姫子は気持ちいいことに弱いので、わりと素で雌堕ちになりやすい。
お客さまに怒られたことはないので、よっぽど細かく設定を伝えられた時以外は、神経質にならないでありのままでいる。

体が興奮の余韻で火照っている。
イきすぎて疲れてしまっても、そんな激しいセックスに心が満たされる。

(リスクはあるけど、これだからこの仕事ってやめられないんだよね)

性癖なんて人それぞれだ。
今度はどんなプレイが出来るだろう?

姫子はシャワーを浴びるため、上機嫌でバックルームへと戻っていった。


end

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第3話「レディーススーツ」
(2022/05/03)


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