運動部に所属している姫子は、ごく普通のスポーツ少女であった。
ショートボブの短い髪に、ほどよく筋肉のついた薄い体。
溌剌とした笑顔は明るく、ボーイッシュで魅力のある少女だった。


「よお、元気だったか長谷川〜」

「っうわ…、何、危ないなぁ」


肩を組むように腕を回され、姫子はたたらを踏みながら歩き出す。
姫子を囲むように歩いているのは、普段からよく話す男友達の3人だった。
――そう言えば、彼らがこうやって絡んでくるのは久し振りかもしれない。
ダラダラと喋りながら行き先も言われず連れて行かれる。
まるで連行されている囚人のようで、少し気分が悪い。
何か用があるのだろう、姫子はそう思って大人しく着いていくことにした。

……後悔するのは直ぐだった。

今は使われていない学部科の旧棟は、その教室のほとんどが備品置き場になっている。
同好会などの活動で使っているらしい。
男友達の1人が、何故か持っていた鍵で、教室の扉を開けている。

(ここって…素行の悪い先輩たちが溜まり場にしてるって噂の空き教室…?)

こんな場所に連れてくるなんて、一体どういうつもりだ。姫子は眉を顰めた。
不穏な場所には近寄りたくないし、長居だってしたくない。
不機嫌な顔をした姫子の肩に腕を回していた男友達が、内緒話をするように、耳に息ごと悪意をふき込んできた。


「おまえ、××とセックスしたんだって?」

「…は?」


××とは姫子に出来た初めての彼氏だ。
少年たちの言うとおり、確かについ先日、苦痛を伴いながらも体を繋いだばかりだった。
だが、問題はそこではない。
男同士の猥談で××がそのことを漏らしたのかもしれないが、男友達とはいえ、デリケートなことを聞いてくるのがおかしい。
不快さを顔に出した姫子だったが、続けられた言葉に頭が真っ白になった。


「処女じゃないならさ、××に内緒で、俺らにもヤラせてよ」


――ガラ…ッ

開かれた空き教室の中へと押し込まれる。
端に積まれた机と椅子の他に、タバコの吸い殻やHな雑誌など、明らかに校内とは思えない不適切なものが散乱していた。
…どういった用途で持ち込まれたのか…姫子は運動マットの上へ引き倒された。
直ぐに両腕を頭上へと上げられて、2人がかりで手首を押さえられ、口を掌で塞がれてしまう。
下半身を跨いで乗り上げてきた男のせいで、足をバタつかせて暴れることもできない。

他の女よりも腕力や握力、脚力だってある。
それでも男の力には敵わなかった。


「あれー、何、色気付いちゃって。長谷川のことだからスポブラしてんのかと思ってたけど、ちょー可愛い下着じゃん」

「でも胸ちっちぇからロリっぽいよな」

「掌におさまっちゃうのが良いんじゃん」


さっきまで友人だと思っていた少年たちが、姫子の制服や下着に手にかけながら、好き勝手に笑いあっている。
突然、悪夢のような出来事にみまわれた姫子は、蒼白な顔で必死に身じろいだ。

(やめてやめて! 気持ち悪いっ、触らないでったら!)

つい先日恋人に触れられた記憶が、ドロドロと汚いもので塗り替えられていく。
素肌を這う男の汗ばんだ掌、生ぬるく湿った息、乾いた唇が体中に触れてくる。
大事な場所に顔を埋めるようにして、舌が潜り込んできた時、姫子の顔は溢れ出てくる涙に濡れていた。


「時間もないし、長谷川、悪いけどもう挿入れちまうな」


ズボンも下着も脱いで下半身を剥き出しにした男は、携帯用のローションを手にとってペニスに塗っている。
姫子はいっそう激しく身じろいだが、呆気なく押さえ込まれ、割り開かれた両足を抱え込まれた。


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