「鬼がとうとう村を出て行ってくれるそうだ」
「そりゃ祝いだ。さあ、飲め、歌え! きっと災いは遠ざかる」
(――筒抜け)
 ……大人な未明は、気にしないけど。
 未明が気が付いてないとでも思ってるのだろうか。
 両親も、姉も、この村のものだということを伏せさせて行こうと思ってるからこんな田舎では手にはいならない上物の着物を渡してきたのだろう?
 
 未明は男性だというのに、これじゃあまるで遊女じゃないか。
 きっと似合うからと髪も伸ばして、普段からこれを着て外出をせがむ。
 遠目から見れば、未明はどこかからのお客様に見えただろう。
 
 こんな場所にとどまりたくなかった。だから、ひたすらに勉学にいそしんだ。
 ……村を出て勉強がしたい。
 そう告げた時の、泣きそうなぐらい嬉しそうな村人の顔をと言ったら。
 テーブルには、客用の料理が所狭しと並べられて、それは「別れ」の席のものばかりだった。
 未明は、気が付かないふりしたけどさ。そんなに露骨に嫌な顔なんてしないよ。



 未明は、村が嫌いだ――。
 でも、ほかの場所では未明の首を見せぬまで、普通に接してくれる。
 能力を、存在を認めてくれる。
 当たり前だ。未明は頭がいいから。



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