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だってだって、俺は先日この人と絶対合格するぞー!とはりきってたんだぞ。
それがどうして、干支学園に入るなんてことになってしまうんだろうか。

「実はね、アタシ、お父さんのトコへ行こうと思うの」

「へえぇ……って親父、今イタリアにいるんじゃねえの?」

「そうよ?」

数年前から親父は仕事の関係でイタリアに行っている。
とは、言っても何か行事がある度に帰ってくるし、ちゃらんぽらんな父親だから、仕事しているかすら定かではないのだけど。

「なんでまた……」

数年離れていたし、ちょくちょく帰ってきているのだから、別に母が行かなくてもまったく問題はないんじゃなかろうか。
そう俺が思考をめぐらせていると母は机をバン、と叩き熱弁する。

「耐え切れないのよ!あの人がちゃんと仕事してるのかとか、ご飯食べてるのかとか、浮気……は、まあ、するワケないけど、あの人とっても面倒くさがりだから!気になって仕方ないのよ!ちゃんと暮らせてるか!」

母は中身が真面目だからずっと気になっていたのだろう。親父はほんとちゃらんぽらんだからおしかけてやろうと。ちょうど俺が高校にあがるから、と考えていたらしい。

「でも、干支学園って学費とかめちゃくちゃ高くないっけ……?うちにそんな金あんの……?」

親父がちょこっと稼いでいる位でウチは有名会社を経営しているワケでも俺にもの凄い才能があるワケでもない。
だから、あんなおぼっちゃま校に入るのなんか到底無理だと思って、母が諦めるのを待っていた俺は計算高く用意周到な母がそんな無謀なことを言うハズがないと気付く。
何より、諦める気がないと顔に貼り付けて微笑んでいる母。物心覚えた時から全く老けない母がその証拠だった。

 


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