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新玉の年(独白)

除夜の鐘を待つことなく寝落ちた大晦日。
あっと言う間に年が明けた。
今まで山なし谷なし平坦人生を送って来た私にとって、去年は比類なき濃厚な一年を過ごした気がする。
もし自分が大人になって就職し、職場で学生時代の話を聞かれたとしよう。
その時はまるでこの一年が私の学生生活の全てだったかのように話せばいい。
よし、昔を懐古する大人が好きそうな青春してましたネタが一つできた。
ーーなんて、この時間が人には話したくなくなるくらい特別なものになるだなんて、この頃の私はまだ微塵も思っていなかった。

人との繋がりは人生を変える。
人格形成に於いての環境の大切さを身に沁みて感じた一年だった。

**********

長らくオフにしたままだったアラームが久し振りに仕事をする。
毎年元旦は親族の集まりがあるのだ。
開き切らない目でスマホを眺めスヌーズボタンを押しつつ、新着を知らせるLEDが気になりLINEを開く。

(あけおめ!ことよろ〜)

0時ピッタリにクロさんからメッセージが届いていた。
研磨はまだ寝ているのだろうか、特に連絡がない。
忘れぬうちに返信しようと文字キーを操作していると一度目のスヌーズ機能が作動し画面をジャックして邪魔をする。
仕方なくきっちりアラームをオフにしてから再び入力しかけるもオウム返しのような言葉を送るのも微妙と感じ、無料で落とせた新年の挨拶が書かれているスタンプ一つで返信を済ませる。
未だ寝ているであろう研磨にも同様に送信。

そろそろ身支度を始めないとまずい。
あと20分で親の車に乗り込み祖父の家へ向かわなければ。
大きな欠伸をしながら起き上がりウザったい前髪をヘアクリップで留め、昨日のうちに決めておいた服に袖を通す。
小さく鳴った腹の虫にお節が待っていると言い聞かせ洗面所で顔を洗って部屋に戻るとベッドの上のスマホがまた光っていた。

(ちょっと春高終わるまであんまり構えねーカモしれねえけど見えないとこでもちゃんと応援しといてヨ)

春高…正式名称、全日本バレーボール高等学校選手権大会。
その名の通り全国の猛者達がバレーボールで鎬を削る3年生にとっては最後の大会。
流石に全国大会出場ともなれば学校からも日程の書かれた紙が配布されたり、校内も軽くお祭り騒ぎのようになっているので、それを知らない生徒はいないだろう。
ただ、時期が時期だけに応援は強制と言う訳ではなく行ける人は出来るだけ行きましょう、と言った感じだ。

「東京体育館か…」

毎年何に使う訳でもなく貯金していたお年玉も今年はいよいよ出番が来るかもしれない。

   <<clap!>>