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下剋上(影山)

side:苗字 名前

"覚えてろよ!"
物心付いた時から幾度となく言われ続けているこの言葉は、飛雄にとって "いつか見返してやる" と言う意味なのは充分理解していた。
そしてその "いつか" は一体いつになったらやって来るのだろうかと面白半分で期待していたらあっと言う間に時は経ち、気付けば私達ももう高校生だ。
しかし私はそのなかなか訪れない "いつか" に何処か安堵していたのかもしれない。
何故なら、少なくとも待ち侘びていた筈のこの展開に柄にもなくパニックを起こしかけているからだ。


「どうした飛雄」

焦りを悟られないよう出来る限りいつも通りを装って言葉を紡いではみたものの、上擦って飛び出した声に内心舌打ちする。

「ど、どうもしねぇ」

しかし私を押し倒す形で見下ろしている彼、影山飛雄は何故か私よりも驚いた様子で言葉を返した。

「そんな訳あるか」
「……」
「ちょ、黙んないでよ」

部屋の空気が私の知っている地球とは思えないくらいに重い。
心臓と言うよりは身体中のぶっとい血管全てが脈打って雑音のようなBGMとなり自棄に耳が遠くなったように錯覚した。


**********

side:影山 飛雄

今日は久々のオフで、しかも外は結構な大雨。
いい加減溜まりに溜まった課題や提出物を片付けちまおうといつも通り俺の部屋で名前に手伝って貰っていた。
でも今日の俺はプリントよりもそのヒラヒラしたスカートの裾に目が行き気が散ってばかりで、そしたらコイツがそんな俺を嘲笑うかのように足を動かして際どいラインまでスカートが捲れて、それで…

「どうした飛雄」
「ど、どうもしねぇ」
「そんな訳あるか」
「……」
「ちょ、黙んないでよ」

血液が沸騰しそうだ。
急に頭ん中がぐわーってなって、正直その後のことはあんまり覚えてねぇ。
考えるより先に身体が動くことなんてバレー以外にねぇと思ってた。
なのに今の俺はなんだ。

「全然意味わかんねぇ」

いつもと違って少し焦った様子の名前の胸元が呼吸の度に上下する。
俺が伸し掛かったことで更に捲れ上がったスカートからは白い脚が伸び、その付け根から少しだけ見える細いボーダーの下着。
無意識に名前の女の部分に目が行きそんな俺の視線に気付いたのか膝を固く閉じた名前が俺の顔に掌を突き出して下から睨み付ける。

「おい、何処見てんだバカ」

何をするにも物怖じしないこいつは目を閉じていればその口調からしても声変わり前の男みてぇなやつ。
昔からずっと一緒で家族同然の付き合い。
そんな俺にとって空気みたいな存在のこいつが他の男と話してるとイライラするのに気が付いたのは中学一年の頃。
及川さんのちょっかいでこの気持ちが恋だと自覚してからはどうしていいかわからなくなりながらも誤魔化し誤魔化しやって来た。
高校に入ってから事故みたいな告白を経て恋人同士になれたのはいいが、相変わらずな立ち位置に自分ばかりが背伸びしているようで、それが更に俺を焦らせた。

「もういい加減重いから退…っ、」

じわじわと沸き上がる衝動が抑え切れず
身を屈めて触れるだけの口付け。
それだけでいつもより更に煩い口は思いの外すんなり制圧できた。
焦点が合わない瞳が見開いているのを確認して自然と口角が上がる。

「やっと黙ったな」
「…飛雄のクセに」

俺はこれから何かが大きく変わって行くと予感した。

   <<clap!>>