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「前にお酒は嫌いだって言ってなかったっけ?」

そう言えば、二十歳の誕生日に大学の友達に初めてバーに連れて行って貰った時、アルコールを飲んで体調が悪くなり物凄く悔したと言う話を例の年に一度のやり取りの時にしたんだっけ。

「う、うん。好きではない。けど、飲めるよ!」
「…ふーん」

疑惑の目だ、視線が刺さるようだ。
しかし今は背に腹は変えられぬ。
そうまでしてでも打開しなければならない空気だと感じていた。

注文したグラスホッパーは甘い物もお酒もどちらも苦手な私が唯一飲める不思議なお酒だった。
口にすればチョコミントアイスのようなスッとする味が口内に広がって行く。

「どうでもいいけどそれ結構アルコール度数高いんじゃないの」

そう言う月島は何杯目だかわからないウーロンハイを飲んでいた。

「別に平気ですー」

アルコールが入ると少し肩の力が抜け、段々俯きがちだった顔も前を向き、今となっては正面から月島の顔を見られるようにまでなっていた。
ただ少し飲み過ぎたのか頭がボーッとする。顔も熱い。
ふわふわとした頭を捻り楽しそうな仲間達の姿を遠目に見つめる。
最早私は話続けるかめっきり黙り込むかのどちらかになっていた。
そんな私に見兼ねた月島の溜め息を溢す姿が視界の端に映り込む。

「あのさ、節度ある飲み方しなよね。子供じゃないんだから」
「わかってます。全然大丈夫だし!」

少し呆れたような、軽蔑するような視線を感じたがそんなものはもう怖くなかった。

「ビール飲む人ー?」

酒に呑まれ眠ってしまったらしい影山と東峰、吐き気を催しトイレに立て籠る日向と山口を除く他のメンバーはまだ生き生きとしていた。
誰かがおかわりをする時は決まっておかわり点呼を取る。

「私も一杯」
「俺も!」
「俺は二杯行ったるー!」

まだまだ元気な声に釣られるように私も…と挙手しかけたところでその手を掴まれ下げられる。

「いい加減にしなよ」

怒りを含んだ静かな声色に反論出来ず机に突っ伏した私は不貞腐れたように口先を尖らせた。

「まだまだ平気なのにー」

眉間にシワを寄せ愚痴を溢しているとラストオーダーの時間になり、次の店はどうするかなどと二次会の店の検討が始まる。
強制的に烏龍茶にされた私の最後のドリンクは手をつけることなく店を出ることとなった。


二次会はありがちなカラオケ。
飲み屋街に立地する有名チェーン店だ。
週末と言うこともあり大部屋に空きはなく、人数的に一部屋で納めるには厳しい為店員さんと交渉の末、格安料金で三部屋に分散することになった。
私は月島、影山、日向、山口と同室になったのだが皆さん見事に潰れている。
割りと元気なままの女子は三人とも別の部屋になった。
各部屋に紅一点は外せないとのことだ。

「これは取り敢えずの部屋割りだから適当に行き来して構わないからな。それじゃ、また後で」

澤村先輩が手際よく説明をして各自部屋に入って行く。
振り分けも決まったところで私は再び化粧室に行くことにした。
鏡に映るまるで茹でダコのような自分の顔を確認するや、この顔で皆と話していたのかと今更ながら恥ずかしくなり洗面台に項垂れる。
いつもは持ち歩かないポーチからファンデーションを取り出し適当にメイク直しをしてはみたものの、修正出来ているのかどうかその判断すらままならい状態である。
そしてそんな酷い有様の私が化粧室から出るとまたあの男が壁に凭れて待ち構えていた。

「デジャヴ…」

つい口から言葉が出てしまった。

「酔っ払いは見張ってないと迷子になるからね」
「月島だって結構飲んでた」
「僕は三杯しか飲んでない。最後の一杯も飲み切ってないし」
「え、そうなの?」

意外だった。
雰囲気的にかなり飲んでるような感じだったのに。
流石と言うかなんと言うか…
そんなことを考えているとまたも腕を掴まれ強引に引っ張られる。

「ちょっと!どこ行くの?」
「君がこれ以上会話不可能になる前に手続きしないと」
「は?何、何の話?」
「僕は別に同窓会をしにわざわざ仙台まで来た訳じゃない」

言いながら店の外まで連れ出され私が夜風に震えていると、月島は慣れた様子でタクシーを拾う。
開いた扉に無理矢理私を押し込むと続いて自分も乗り込んだ。
月島がどこかで聞いたことのあるホテルの名前を運転手に告げると颯爽とタクシーが走り出す。
私は呆気に取られ隣の月島を見つめた。

「……」
「……何」

視線だけをこちらへやり不機嫌そうに吐き捨てる彼の表情からは何も読み取れない。

「ええっと、私、起きてるよね?」
「馬鹿なの?」

辛辣な言葉をかけられ言い返そうと月島の方へ向き直り顔を上げるとその後ろで流れていた窓の外の風景が段々とゆっくりになり間もなくタクシーが停車した。
目的地に到着したのだ。
ほんの数分の距離だったと思う。

「おつりは結構です」

月島はスマートに1000円札を出すとそう言って先に車を降り急かすようにこちらへ視線を送る。

「ほら、迷惑だから早く降りなよ」

状況を把握できないまま私はタクシーから降りると一応忘れ物はないかと今更ながら確認した。

「とろとろしてないで行くよ」

回らない頭で、よくわからない状況で、唯一わかる彼の言葉に従い彼の後を追う。
連れて来られたのはそこそこいいビジネスホテルで、チェックインは既に済んでいるらしくフロントで鍵を受け取るや私の腕を引いて丁度来たエレベーターに乗り込む。
エレベーターは10階で止まり突き当たりの部屋の前まで歩いて行くと月島はやっと私の腕を解放して部屋の鍵を開けた。

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