眼光炯々(研磨)
正面で体育座りをしている研磨は静かにゲームをしている。
しかし時折感じる刺すような視線が痛い。
こんなことになったのも全部リエーフの所為だ。
私はそう責任転嫁して携帯を握り締める手に力を込めた。
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私が研磨の家に来たのは一時間前。
久々に訪れた研磨の部屋は相変わらずゲームだらけで、けれど散らかっている訳でもなく閑散としていた。
手土産にジュースとお菓子を持参した私はゲーム機を手にする研磨の隣に腰を下ろし小さな画面の中でモンスターに向かって剣を振り翳すキャラクターを見ながら呑気におやつタイムを楽しんでいた。
しかしスナック菓子を数個口に放り込んだところでバイト先から電話が掛かって来てしまい、私は研磨に断りを入れてから携帯片手に外へ出た。
そして十分程通話をしてから部屋に戻り先程と同じ位置に腰を下ろしたのだが…
タイミングがいいんだか悪いんだか、続け様に来たリエーフからの電話に反射的に出てしまったのだ。
再び席を外そうと立ち上がった私だったが不機嫌そうな研磨に腕を掴まれると素直にその場に止まり向かい合う形で腰を下ろした。
――そして現在に至る訳である。
『名前さーん!お久し振りッス!』
「あ、うん。久し振り…」
私は研磨の機嫌を窺いながら会話に応じる。
研磨は変わらずゲームに夢中のように見えたが何度も感じる視線から私の通話を快く思っていないのは明白だった。
「ごめん、後でかけ直…」
『今度音駒バレー部の仲良しOB会やるんスけど名前さんもどうかなと思って!』
一旦電話を切ろうと試みるもそんなことなんてお構いなしに話を切り出して来たリエーフに圧された私は一度口を噤んで困ったように研磨に視線をやる。
「リエーフ?」
顔を上げることなく研磨に問われ私は小さく頷いた。
「…そう言えば、おれのところにもLINE来てたかも…」
一見いつも通りのようだが一度も目を合わせてくれない。
これは研磨の機嫌があまり宜しくない時の行動だ。
『名前さん?』
「ああ、ごめん」
暫く黙り込んでいた私を不審に思ったのか確認するように名前を呼ばれはっとして電話に意識を戻すとそれを見ていた研磨はゲームの電源を落として無表情に立ち上がり私の背後に移動した。
「…おれも構って」
後ろから抱き締められ耳元で吐息混じりにボソッと呟かれドキリとする。
反対の耳からはリエーフの『勿論来ますよね!』と言うハイテンションな台詞から詳細が語られ始めたが内容が全然頭に入って来ない。
「ねぇ、名前…」
研磨の行動は次第にエスカレートして行き先程まで器用なゲームボタン捌きを披露していた指先は私の身体を這うように撫で回す。
耳を甘噛みしていた唇は舌先をチラつかせながらナメクジのように下降して行き首の付け根に到達すると強く吸い上げてうっすらと花を散らした。
「…っ、」
思わず漏れそうになる声に冷や冷やしながら研磨を振り返ると普段は見せない鋭い瞳が私を捉えていた。
これはスイッチが入ったな、と諦めにも似た感覚が私を支配する。
「ごめん、リエーフ。後で掛け直す」
『へ?う、うす!』
私は今更ながら無理矢理電話を切ると携帯をテーブルに置いて研磨の手を制しながら横目に睨んだ。
「…なんだ、切っちゃったの?」
「こんなことされたら切るよ」
「じゃあ…そろそろおれのものになる時間」
言うより早く私を押し倒した研磨は首に噛み付かれ顔を歪める私を満足そうに見下ろしていた。
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