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堂々巡り(影山)

「あれ?名前ちゃんだー。元気してる?」

近所のファミレスで友人とご飯を食べていたら中学時代の先輩とエンカウント。
斜め向かいの席に通された及川先輩は近距離だと言うのにこちらへ向けて思い切り手を振っている。
ただでさえフェロモンを振り撒いている及川先輩が子供のようにはしゃぐ姿に周りの女子達の視線は集まり、先程まで友人との憩いの場であった筈のこの空間は一気に居心地の悪いものとなった。
しかしこちらに背を向ける形で座っていたにも拘わらずそれを瞬時に察した岩泉先輩が即座に及川先輩の腕を掴んでテーブルに縫い止める。
そして申し訳なさそうに私に振り返ると軽く頭を下げながら小さく手を上げた。
そんな変わらぬ目附役の存在に安堵して私はつられるように会釈する。

「岩ちゃん痛い!折れる!」
「粉砕しろ」
「トス上げられなくなっちゃうよ!いいの!?」
「そん時はそん時だ」

その後も及川先輩の悲痛な叫び声が聞こえたが丁度友人の門限が近付いていたこともあり私達は他人のフリをして席を立った。
伝票を手にし先輩達の前を避けるようにわざわざ遠回りしてレジへ向かうとさっさと会計を済ませて店を出る。
自転車でやって来たらしい友人とは店前で別れ私は一人で帰途に着いた。

**********

「やっと帰って来たか」

玄関にそれっぽい靴があったから怪しいとは思っていたけれど…
我が家のリビングで飛雄とエンカウント。

「何でいんの」
「宿題…」
「あーもう!先に部屋行ってて!」

幼馴染みと言うのは互いの親の警戒心を緩める恐ろしいシステムだ。
私は母から二人分の麦茶を受け取ると自分の部屋へ向かい勝手にベッドで寛ぐ飛雄を一睨みしてからコップをテーブルに置いて腰を下ろす。

「宿題しに来たんじゃないのかよ」
「目の前に布団があったら寝るだろ」
「ねぇ、馬鹿なの?あ、馬鹿なのか」

私は深いため息を吐き出し先程ファミレスで済ませた自分の宿題を取り出すと先にテーブルに置かれていた飛雄のプリントの隣にバシッと音を立てて置いた。

「教える体力が無断だから勝手に写して」
「お、おう」

私の気迫に圧されたのかすんなりと起き上がり床に座って答えを写し始めた飛雄と入れ替わりでベッドに転がった私は後ろからその様子を監視することにした。
二枚の紙を前にすらすらとシャーペンを走らせる飛雄の後頭部を暫く眺めているとコップの横に置いていた携帯が光り鈍い音を立てて震え出す。
私は横着をして転がったまま飛雄の横から携帯に手を伸ばし掛けたが、私が触れるより先に飛雄が通話ボタンを押して電話に出てしまった。

「名前は取り込み中です。ちょっかい出さないでもらえますか」
「なんでトビオちゃんが出るのさ!」

スピーカーモードにしなくとも音漏れしているその声に通話相手が及川先輩だとわかるや私はそのまま対応を飛雄に任せることにする。

「そう言う訳なんで、失礼します」
「ちょ、待っ…」

――プツッ
飛雄は手短に会話を済ませ10秒と持たずに通話終了ボタンを押した。

「…お前、及川さんと連絡取ってんのかよ」
「さっきたまたまファミレスで遭遇しただけ」
「何で連絡先知ってんだよ!」
「多分あの人は校内の殆どの女子の連絡先知ってたと思うけど…って言うか何、嫉妬?可愛いねー飛雄は」
「ばっ、ちげーし!」

わかりやすい反応を示した飛雄にニヤリとした笑みを向けるとカッとなった飛雄は携帯を持ったまま勢いよく振り返りそのまま私に覆い被さる。
私は天井を背景に飛雄を見上げる形となり一瞬キョトンとするも直ぐに目を細めて飛雄を見据えた。

「私に楯突いていいと思ってんの?」
「ぐっ…」

そんな私と目が合うと飛雄は出し掛けた手を誤魔化すようにその場に携帯を置き、小さく舌打ちをして元の位置へと戻ってしまった。

「…ヘタレ男」
「う、うるせぇ!覚えてろよ!」
「それこの前も聞いた」
「…クソッ」

この関係を変えたいようで変えたくない私の心の葛藤はまだまだ続きそうだ。

   <<clap!>>