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模擬夫婦(月島)

恋人と固定休が同じと言うのは本当に恵まれていると思う。
周りの友人達の話だと休みが合わないことから心まですれ違い、結果別れてしまうと言うことも少なくないらしい。
付き合い始めてから三ヶ月が経過した私達は互いに休みである日曜は決まってデートをしていた。

「今日は一緒にご飯を作りましょう」
「普通そこは名前が作ってくれるものなんじゃないの?」

電話の向こうから月島のため息が聞こえるが私は気にせずに交渉を続ける。

「まあ細かいことは気にしない!」

と言うのも、基本的にいつもデートは外食ばかりでその都度会計は月島持ちになっていることに気が引けていた。
いつも知らないうちに会計を済ませてしまう彼は私が出すと言っても絶対に受け取らない。
しつこくした所で「外でそう言うの恥ずかしいんだけど」と、一蹴され結局毎度ご馳走になっている。

「うち調理器具とか調味料とか殆どないけど?」
「じゃあうちで作ろう」

月島の部屋がどんな感じなのかとても気になったけれど流石にフライパン持参で行く気にはなれず、待ち合わせの時間と場所を決めて電話を切る。
適当に服を見繕って着替え、二人分の米を研ぎ炊飯ボタンを押してから私は待ち合わせの駅に向かった。

**********

いつも私より先に着いて待っている日本人の平均身長より遥かに大きな彼はどこにいても一目ですぐにわかる。
今回も例に漏れず先に来て壁に背を預けている月島を発見すると少し離れたところから名前を呼んだ。

「ツッキー!」
「……」

私の呼びかけに機嫌を損ねた月島が足早に距離を詰めて来たが、すぐに追い付かれてしまうであろうその距離を楽しむように私は先に向かいのスーパーへと歩き出す。
ほんの数十メートル先の自動ドアをくぐり抜ける頃にはもう月島は私の隣にいた。

「何作ろうか?」
「最低限食べられるものにしてよね」
「失礼な。こう見えて自炊派だよ」

カートにカゴを乗せ二人並んで売場を回る様は端から見たら夫婦のように見えているかもしれない。
そんなことを思いながら野菜売場でサラダの材料をカゴに入れ、精肉売場をチラ見しながら通り過ぎ鮮魚売場へ。
そこで広告の品と書かれている鰈を見つけ遂にメイン料理が決まる。

「よし、今日は鰈の煮付けにしよう。月島はネギと生姜探して来て」
「何で僕が…」
「いいから!」

渋々野菜を探しに向かう大きな背中からは何処か哀愁が漂っていた。
暫くして戻って来た月島の手には三個入りの玉葱一袋と生姜が握られており私は思わず肩を落とす。

「生姜はいいけどネギが違う。私が求めてたのは長ネギ。はいやり直しー」
「それなら初めに言ってよ…」

文句を言いつつも再度探しに行く姿は初めてのお使いをする子供みたいで何だか面白かった。
買い物を済ませ荷詰め台横の壁に掛かっていた時計を見上げると早くも午後二時を回っており、中途半端な時間にご飯になるなと苦笑しつつ私達は家へと急いだ。

**********

「別に期待してた訳じゃないけど本当に女の子の部屋とは思えない程さっぱりしてるね」

部屋に上がるなり開口一番この言葉だ。
何て失礼なやつだろう。

「ピンクでもフリフリでもなくてすみませんね」

そう言って私はスーパーの袋を床に置くとまな板と包丁を出して早速料理の下拵えを始める。

「月島は味噌汁担当ね」
「意外と手際いいんだね」
「何でちょっと残念そうなの…」
「包丁で指でも切って青冷める名前を楽しみにしてたんだけど」

思わず鬼畜!と叫ぼうとしたがふと月島の手元に視線をやると豆腐がどうにも味噌汁には不向きな形に刻まれていた。

「月島さん?お豆腐のお味噌汁を召し上がったことはございますか?」
「うるさいな。男にこんなことさせる名前が悪い」

随分と時間を掛けやっとのことで出来上がった味噌汁は不格好だが美味しそうな匂いがした。
私は魚を煮ている間にサラダを作り、タイミング良く炊けたご飯と共にそれらを盛り付ける。

「冷蔵庫に煮物の作り置きあるからテーブルに出しといて」

テーブルを拭きながら月島に指示を出すと少し不満そうな顔をしていたが、読み通り結局きちんとこなしていた。
料理を一通り並べ終えると二人一緒に腰を下ろし箸を手にする。

「いただきまーす」
「いただきます」

東京へ引っ越して来てから初めての来客、そして初めて振る舞った料理にそわそわしながら月島を盗み見る。
しかし月島は特にいつもと変わらぬ様子で無言のまま料理を食べ進めていた。

「…あの、お口に合いませんでした?」

覗き込むようにして恐る恐る問う。

「これだけ食べてるんだからそんなわけないデショ」

彼が捻くれ者なのを忘れていた。
これが彼なりのお褒めの言葉なのだろう。

「美味しいってちゃんと言ってよ」
「気が向いたらね」

月島は全て綺麗に食べ終えると「デザートがない」と言って代わりに私の赤い唇を軽く吸った。

   <<clap!>>