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高度恋愛成長(月島)

笑顔と泣き顔は似ている。
喜びも悲しみもどちらも同じ感情の爆発だ。

いつからだろう、誰にでも平等な彼女の笑顔が恐くなったのは。
笑顔の裏の真実も所詮、誰にも伝わらなければ無いに等しい。
しかし彼女のそれは汲み取ってやらなければいつか壊れてしまいそうな気がしてならなかった。


「いつも周りの顔色ばっかり窺って馬鹿じゃないの」

部活中、笑顔を振り撒く彼女に吐き捨てると彼女は表情を崩さないまま僕に向き直り首を傾げた。

「え、そんな風に見える?」

本当に腹が立つ。
それとも自覚がないのだろうか。
彼女とは対照的に明らかに不機嫌ですと顔に書いているであろう僕はそれを誤魔化すように眼鏡を外してタオルで顔を拭いた。

「じゃあ月島君はさ…」

眼鏡をかけ直したところで頭一つ分より更に小さい彼女と目が合う。
その瞳は真っ直ぐに僕を見ていた。

「何でそんな苦しそうな顔してるの?」

何を言っているんだこの女は。
見当違いな質問に僕は思いきり眉根を寄せる。

「君の目は節穴なの?」

予想だにしていない話の展開に半ば呆れながら返すと彼女はもう僕から視線を外しており、その瞳はコートで練習をしているチームメイト達の姿を捉えていた。
僕を避けるようにして向けられた彼女の横顔は先程までとは違い、表情を無くしていて何処か泣き出しそうな雰囲気だ。

「月島君は一生懸命な人を見てる時苦しそうな顔してるよ」

核心を突くような一言に僕は言葉を詰まらせた。
彼女はそんな僕をチラリと一瞥すると人数分のドリンクボトルを並べて行く。

「もうすぐ春高の予選が始まるね」

今度は僕が彼女から逃げるように顔を背け、作りたてのドリンクを手にして大して渇いてもいない喉を潤す。

「この先の試合は…三年の先輩達の引退がかかって来るんだよね」
「なに、好きな先輩でもいるの?」

茶化すように鎌をかけると急に彼女は焦り出し、勢い良く首を横に振った。

「ち、違うよ!あまりそう言うのは意識したことない…」
「そう」

何となく、少しホッとする。

「私はただ…この空間を、この時間を失いたくないだけなのかもしれない」
「…ふーん。まあ変わらないものなんてないんだし、精々残り少ない青春時代を楽しめば?」
「まーたそういうこと言う」
「事実デショ」
「月島君も一緒に楽しむんだよ」

そう臭いセリフと共に向けられたのは裏表のない眩しいくらいの笑顔。
そうか、僕はただ自分以外にこの笑顔を向けられるのが嫌なのだ。


――無意識の嫉妬に狂う天の邪鬼――

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