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「#甘々」のBL小説を読む
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膨らむ器(研磨&黒尾)

「と言うワケで、また合同練習があんだよ。しかも今回はウチで」
「そうなんですか、頑張って下さい」
「鉄朗君、研磨君。おかわりいる時は言ってね」
「はーい」
「…はい」

この異様な空間に居心地の悪さを感じながら私は茄子の煮浸しを口へ運ぶ。
そもそもこんなことになったのも全て母の所為だ。
部活帰りに我が家に訪れた二人をさも当然のように家に上げ、今日はゆっくりして行ってねと丁重に迎え入れたと思ったら、先日のジャージのお礼と理由付けて夕飯まで作り出した。
父が単身赴任してからと言うもの、二人きりの食事に物足りなさを感じていたのか、今日はやけに張り切っているように見える。
母は何かと皿が空になる度次なる副菜を作りに台所へと消えた。

「名前はもうちょっと俺に優しくできねぇの?」

我が家の食卓に堂々と居座るクロさんが不満げに溢す。
私は気にせずサラダを摘まんで口に放り込んだ。

「たまには俺の勇姿を見に来いよ」
「……」
「あんまり言いたくないけど…クロ、上手いよ」
「そうなの?研磨は?」
「研磨は頭脳プレーヤーだもんな」
「…何それ、意味わかんないし」

研磨が照れ隠しなのか何なのかぶすっとした表情になる。
しかし満更でも無さそうだ。

「クロさんはどうでもいいけど研磨が試合とか熱い舞台に立つ姿は気になる」
「オイ」
「おれのことはいいよ…」
「合宿に来ればもっと面白い奴らいっぱいいるぜ?」

そして話は冒頭に戻った。

「何度も言いますが私はマネージャーはやりませんよ」
「えー」
「と申されましてもやりません」
「研磨もなんか言ってやれよー」
「別に…やりたくないならやらなくていいんじゃない」
「さすが研磨。大好き」
「その俺だけ悪者みたいな扱いヤメロ」

そうこうしているうちにマリネ、きんぴらごぼうに続いてホタテのバター焼きが運ばれて来る。
研磨はもう限界なのだろう、大分前から箸が止まっていた。

「名前さんのお母さんはお料理上手ですね」

すかさずクロさんが例の余所行きの笑顔で褒めると母は「あらやだ、ありがとね」と嬉しそうに微笑んで返し空の皿を下げに三度台所へ向かう。

「…名前はお母さん似だね」

母の背中を見て研磨がボソッと呟いた。

「そうかな?性格は真逆だけどね…」
「「確かに」」
「え、何この空気」

二人の声がハモりギョッとする。

「でもまあ名前も笑うと可愛いもんな。大分下手くそな笑顔だけど」
「私がクロさんに笑顔なんて向けたことありましたっけ?」
「まあ俺にはないけど…」

言い掛けて研磨の方を一瞥する。
研磨はクロさんの視線を受けると嫌そうに眉根を寄せた。

「なに?」
「いや、研磨と話してる時は割りと笑ってるぜ。研磨もだけど」

その一言で私と研磨は意外そうに揃って首を傾げる。
そして二人してクロさんの方を向き同時に口を開いた。

「「そうかな??」」

今度は私達の声が見事にハモり、それを見たクロさんが肩を震わせながら笑いを噛み締める。

久々に迎えた賑やかな夕食だった。

   <<clap!>>