short | ナノ






Just be friends



「アイリスー!!」

ドタバタと騒がしい音が上ってきて、バタンと談話室のドアが開かれた。

「アイリス! 今日こそ俺と」「断る」

ひょろりと伸びた背にそばかすだらけの顔、そして癖のある赤毛の青年ーー双子のウィーズリーの片割れ・ジョージが言葉を遮られて肩をすくめた。
彼の言葉を遮ったのは、細く滑らかな黒糸の髪を伸ばした、肌の白い、一見物静かな少女だった。
再びアイリス、と呼ばれた少女は、ほぼ反射的に、低い声で「断る」と言った。

「俺の話もきいてよ」
「嫌だな。それくらいなら私は魔法史を受けたいね」

にべもなくぶっきらぼうに言い放つアイリスに、ジョージはやや遅れて入ってきた相棒に声をかけた。

「きいたかフレッド。今日もフラれたぜ」
「バッチリな。いい加減諦めろよ。…アンジェリーナ!」

大してショックもうけていない様子のジョージに、フレッドはあきれ気味に言い、女子寮の階段を上っていくアンジェリーナに手を振った。
アイリスは二人に目もくれず、書いていた宿題のレポートを丸めると、教科書と一緒に脇に抱え込んで立ち上がった。
おやっ、とジョージがアイリスに近付くと、それより早くアイリスが歩く。さらに足を速めると、アイリスも速くなる。
いたちごっこになる前に、ジョージがアイリスの手から羊皮紙の束を取り上げた。

「返せ」
「ヤダ」
「返せ、バカ」
「断る。話くらい聞いてくれたっていいだろ」
「嫌だ。返せ」

会話が堂々巡りになりかけたところで、フレッドがジョージの手からアイリスの羊皮紙を奪い取り、アイリスに手渡した。

「返すよ」
「助かる」
「フレッド!?」

ジョージが振り返ると、フレッドがニヤリと笑った。

「俺の相棒なら、惚れた女は自力でおとせ」
「……つくづく思うが、お前等は本当にバカだな」

アイリスはため息をつくと、二人の間からするりと抜け出して女子寮の階段を上っていった。
ジョージはその後ろ姿を見て、ため息をついた。
「まだまだ望み薄、か」「気長に頑張れよ」