FとG 「「アイリスっ!!」」 「な…なぁに?」 突然(いつものように)声をそろえて私の名前を呼んだフレッドとジョージは、ずいと大きく(鼻がぶつかりそうなくらい!)近付いた。 驚いて肩をすくめると、二人はにやっとあのいたずらが成功したときの笑みを浮かべた。 「「メリークリスマス!!」」 ぽん、とヤドリギのトゲトゲしい葉っぱがはらはらと舞い落ちる。 「え、ええ……メリークリスマス」 目を丸くさせたまま、私はとりあえずそれだけ返した。 ホグワーツのクリスマスがとっても賑やかだと知ったのは昨年で、プレゼントの量にたまげてベッドから転がり落ちた。 みんなからは羽ペンやケーキ、フレッドとジョージからはお菓子(怖くて手がつけられない)をもらった。 去年贈って好評だったのは日本のお菓子で、去年はコンペイトウ、今年はセンベイにした。 それはともかくとして、本当にこの二人の好きそうなイベントだ。 イースター、夏休み、ハロウィン、クリスマス、冬休み、バレンタイン…毎回、洒落の利いたいたずらをしてくる。 私だけではなく、ホグワーツ全体に、なのだが。 「プレゼントありがとう」 「僕らに『ワールド・ジョーク・ブック』を贈ったのは大正解だ」 「おかげで次の発明品を思いついたんだ」 「聞きたい?」 「ああ…いいえ。結構よ」 矢継ぎ早に、息もぴったりに交互に話しかけてくるフレッドとジョージは、正直手に負えない。 どうせ喋り出すんだろうけれど…そう思ったところで、ふと違和感を感じた。 「ねえ、フレッド、ジョージ」 「「なんだい?」」 あら、こんなときでも息がぴったりなのね、なんて考えながら、もう一度二人をよく見る。 …やっぱり、何か変だ。 口を開きかけたところで、男子寮からハリーとロンがおりてきた。 「メリークリスマス、アイリス」 「メリークリスマスハリー、ロン」 「おいジョージ! ロニー坊やもおふくろのセーター着てるぜ!」 「見ろよフレッド、ハリーもだ!」 「そういう二人も着てるじゃ…」 ロンの言葉に、ぴかーん、と頭の中で電球が灯る。 ロンの栗色のセーター、ハリーのエメラルド色のセーター、フレッドとジョージのオレンジ色のセーター。 糸が一本につながり、もやもやが晴れる。 「わかったわ!!」 「アイリス?」 「何がわかったって?」 パチクリとハリーとロンが聞き返す。 私はフレッドとジョージのもとへ行き、セーターに編み込まれた二人のイニシャルを読む。 「F、G」 フレッドと、ジョージのイニシャルだろう。 「見くびられたものね。あなた達、これじゃ『グレッド』と『フォージ』よ」 きっぱりと告げると、フレッドとジョージは顔を見合わせ、ハリーとロンは頭上にはてなマークを浮かべた。 この二人は実の母親でも区別が難しいというけれど、私には違いがはっきりとわかる。 だいたい、私がフレッドとジョージを間違えるはずもない。 「すごいやアイリス!」 「さすがだね」 「ええと…どういうこと?」 「ああ…そういうことか」 ハリーはなんとなく察したらしく、ロンだけが不思議に思っている。 「フレッドとジョージは、それぞれ自分のじゃないセーターを着てるのよ。私がそんなのに騙される訳ないじゃない」 「へぇ〜…そうなんだ」 ロンが感心したように見てくるけれど、あなた、弟よね…? なんて考えていると、ガバッと『フォージ』が私を抱き締めてきた。 「さすがアイリス! 愛の力だね!!」 「じょ、ジョージったら…」 ひゅう、とフレッドが口笛をならす。 照れくさくなるけれど、同時にとても嬉しくなる。 聖なる日に、浮かれてみるのも悪くないかな、なんて思いながら少しだけ背伸びをした。 大好きな君だけにプレゼント。 (kiss you!!) |