short | ナノ






たぬきねいり



「………二人とも、まだ寝ないの?」

夜遅く、読んでいた本にしおりをはさんでアイリスが双子のウィーズリー、フレッドとジョージに訊ねた。
アイリスは本を読んでいるが、二人はいつもいつもイタズラの話をしている。しかも二人は、アイリスと違って日付が変わってもベッドに行かないことがままある。夜中に起きて、まだ話している二人を見て何度もぎょっとした。
「アイリスこそ。今日は遅いんじゃない?」
たぶんフレッドがちょっとだけアイリスのほうを見ながら言った。ジョージがつられてアイリスを見る。
「私はこれから寝ます。それより、貴方たちまだ終わらないの? もう日付変わってるわよ」
アイリスは時計を見て、顔をしかめた。
フレッドとジョージは顔を見合わせると、またアイリスを見て肩をすくめた。
「いつものことさ。なぁ、相棒」
「まったくもって、いつもどおりだ!」
まだまだ寝る気がないような二人の様子に、アイリスはため息をつくと、本をもって立ち上がった。そして二人を見て、ぴしゃりと言い放った。

「あきれた! 明日の朝食に遅刻でもすればいいわ!」

そのままずかずかと女子寮の階段を上って行った。
残されたフレッドとジョージは、額を突き合わせて、またこそこそと話し始めた。



「……いったい、今何時だと思ってるのかしら」
夜中、また目が覚めたアイリスは、談話室で温かいものを飲もうと思い降りてきた。
ところが、まだ寝ていなかったのか、フレッドとジョージがソファに座っていた。いい加減に注意しようと近づいて驚く。
「……寝てるわ。……寝るんなら、ベッドに入って寝られないものかしらね」
さすがに呆れてしまった。
だが、
「…この人たちが寝ているところなんて、初めて見るわ」
素直に、感心してもいた。
アイリスはちょっと考え込んで女子寮へ駆け込むと、毛布をもってすぐに降りてきた。そしてその毛布を、二人にそっとかけてやり、自分はフレッドの隣に腰かけた。(ジョージの隣には羊皮紙が山積みになっていた!)
「ふぁ……ああ眠い。ほんと、よく寝なくても平気ね…」
アイリスは小さなあくびを一つすると、そのままテーブルに突っ伏して、くうくうと寝息を立て始めた。
静かな夜の闇。
…と、フレッドとジョージがなにやらごそごそと動いた。
「…相棒、いま何時だ?」
「二時半」
「今日は早いな」
あくびを噛み殺しながら、双子が起き上がった。
「いつもならすぐ寮に帰るのに」
「珍しいこともあるもんだ…アイリス、寝てる?」
どうやら二人はたぬきねいりをしていたようで、それでアイリスの反応をうかがっていたようだ。
「あーあ、アイリスってばこっそりこういうことするから可愛いんだよなあ」
「眠いんなら、いつもみたいに寮に帰ればよかったのに」
フレッドとジョージは顔を見合わせると、ちょっとだけ笑って、毛布をアイリスにかけてやった。
「アイリスのためにも、ここじゃ寝らんないな」
「ああ。というか…今日はこのまま?」

そして二人は、アイリスを起こさないように話していた。
翌朝、アイリスは目が覚めた時になぜ談話室にいるのかと驚き、朝の挨拶をしてきた双子をこっぴとぐしかった。