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七夕



【七夕・棚機】
  7月7日の夜に、おこなう祭り。
  一年に一度この夜に、牽牛星が織姫座に会いに来るという。
  笹竹に、字を書いた短冊を飾り、芸の上達などを祈る。
  星祭。

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「ってなわけで、これに願い事を書いて笹にぶら下げてね!」

なにがどう、てなわけなのか誰にも分からなかったが、神田、ラビ、アレン、リナリー、ブックマン、その他諸々の面子に向かってそういったのは、日本人エクソシストの一人、桔梗だった。
桔梗は一人ひとりに、細長く切ってある色とりどりの紙と、ペンを渡す。
「日本には面白い文化があるんですね」
といったのは、渡された短冊を物珍しげに眺めるアレン。ペンをくるくると回しながら、桔梗に微笑んだ。紳士スマイル!
「でも、日本にはクリスマスとかはないんでしょう?」
といったのは、ペンを握って、なにか願い事を考え込んでいるリナリーで、
「ああ、ねぇな」
と答えたのは神田だった。神田は面白くもなさそうに、渡された短冊とペンを見つめる。
「へー。そんな国もあるんさぁ…」
不思議そうに一人ごちたのはラビだった。なにやらニヤニヤ笑っている。「ラビ、顔」「あ、やべっ」とアレンに苦い顔で注意されていた。
雑談を交えながら、一同は各々願い事を短冊に書いた。
アレンは桔梗に、「願い事は一つですか!?」と必死の形相で聞いてきていた。「た、短冊一枚につきね」と桔梗は引きつった笑いで答えた。
「よし!」
どこからか調達してきた笹を、短冊やら何やらで飾りつけると、それは豪華なものになった。
ちなみに、飾りの類は桔梗が前々からしこんでいたらしい。
ラビやアレンが、飾りの細かさに感嘆していた。日本人はみんな作れるのか聞いていたが、桔梗は「あー神田には無理だろうけどね」と言って一同を笑わせ、神田を不愉快にさせた。
「日本のクリスマスツリーみたいですね」
アレンが笹を見上げながら言った。
「あ、いえてるさ!」
「でも、素敵な文化ね」
リナリーが微笑みながら桔梗に言った。基本、神田はガン無視である。
「でしょー!?」
嬉しそうに桔梗が言った。
「あ、そういえば…」
アレンが、ふと思いついたように桔梗のほうを見ながら訊ねた。


「桔梗はなんて"お願い"したんですか?」


「あたし…? あたしは……秘密っ!」
予想外の展開に、桔梗は急いで自分の短冊をてっぺんに飾りつけた。
「あー、ずるいですよ!」
アレンがムッとして言った。
「そうよ!」
リナリーも同意。
「そーだ、そーだ!」
ラビも便乗。
みんなして桔梗の取り付けた短冊を見上げていた。
「へへー、残念でしたー」
勝ち誇ったように桔梗は笑った。





『髪が生えますように』とか、『借金がなくなりますように』とか、そんなくだらないことも書かれた色とりどりの短冊の中に、丸っこい、小さな字でかかれたものがあった。




―――みんなずっと、一緒にいられますように。