新婚かっ!



「あ、快斗おかえり!」
なんて、私服にエプロン姿のひなが笑うもんだから、俺は突っ込むことも忘れて「ただいま」なんて返しちまった。
「快斗っていつもお風呂とご飯、どっち先?」
「飯。…って違うだろ! なんでオメーがうちにいんだよ」
台所で慌ただしく鍋をかき回したり、冷蔵庫を開けたり。一瞬ここはひなの家ではないかと思ったくらいだ。しかし間違いなく俺の家。ひなの家っつーか友起さんの家ではない。
「今日と明日、友起君いないんだ。快斗のおばさんを夕食に誘おうと思ったら、おばさん出かけるっていうから」
「まさか…」
「快斗の食事ついでに、どうせなら泊まっていきなさいって言われちゃって」
「泊まんのか!?」
あのババア何してくれてんだ、と思わず立ち上がれば、ひなはちょっと困ったような顔で「ダメかな?」と尋ねてきた。
「ダメっつーか…ひな、オメー仮にも女子高生だろうが。気軽に男の家に泊まるとか考えんなよ」
ひなが俺のために食事を作ってくれるだけで嬉しさがいっぱいだが、一晩うちにいるともなれば、残念ながら理性もいっぱいいっぱいだ。好きな女が家にいて、なおかつ家には誰もいない。これはいくらキッドでも、食わなきゃ恥レベルの据え膳だぜ。しかも彼女だぞ、ただの友達とかじゃねーんだぞ。
「気軽じゃないもん。快斗だけだよ」
だから、そーゆーことをいうなって!
「どうせ明日の朝ご飯もあるからって思ったんだけど…快斗が嫌なら帰るよ。夕飯はあと煮込むだけだし」
「ちょっと待て!」
コンロの火を弱くしたひなが、エプロンを外す。嫌なわけじゃもちろんないし、ひなにそんな顔をさせたかったわけでもない。
「べ、別に嫌なわけじゃねーよ」
ベッドはひなに貸して、俺は床に寝るしかねえな。
「もう暗いし、仕方ねえから泊まっていけよ」
「ほんと!?」
「……オメー、風呂は?」
「私? まだだけど、快斗のあとでいいよ」
もうご飯できるし、と言ったひなに声を張る。
「先入れ。飯くらい俺が見とくから」
ひながあがったら、バレねーように湯船張り替えなきゃな。そのまま入れるほど、俺は神経が太くない。
「わかった、お願い…あ!」
「何だよ?」
「快斗、覗かないでね?」
「っ、のぞかねーよ!!」
そんな心配ができるなら俺の家に泊まりに来んなっての!
……覗きてーに決まってんだろ!



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