奴が噂の



コナン君が騒ぐ声を聞きながら、彼が高校生探偵と名高い工藤新一、本人なのだなあと思っていた。以前快斗が言っていたけれど、確かに工藤君と快斗は、顔の作りが似ている。
「蘭ちゃん、あれが蘭ちゃんの幼なじみなんだね」
「そうよ。でも、連絡くらいしてくれたっていいじゃない…」
急に現れたことへ不満を漏らす蘭ちゃんを見て、工藤君は愛されてるなと思った。コナン君がこんなに甘えたがるほど、蘭ちゃんはわかりやすく工藤君を気にしている。
「思ってたよりいい人みたい。子供たちとも仲良いみたいだしね」
キッドを追い詰めるキレた推理をするというから、どんな人物かと思っていた。けれどあまり面白くないダジャレを言って場を和ませたり、蘭ちゃんに気障なことを言ってみたり、工藤君にずいぶんな好印象を抱いた。
「オメー、蘭の友達か?」
「あ、うん。浅野ひな。よろしくね、工藤君」
「おう」
するりと子供たちの輪から外れた工藤君と挨拶を交わす。工藤君は蘭ちゃんを誘って、屋上の警備チェックに行くようだ。コナン君も無理矢理ついて行くみたいだけど、そこは空気を読もうよ。
「あ、メールだ。ちょっとごめんね、園子ちゃん」
「彼氏ぃ? 何だったら電話してきていいのよ!」
「あはは…」
苦笑いを返して、メールを見る。快斗からだ。小五郎おじさんの推理通りなら、もうキッドとして潜入したのだろうか。
『ひなって、ほんと俺の変装気付かねえよな』
素っ気ない文章に、思わず固まる。気付いてない、と指摘するということは、キッドは今まで会った人物の誰かに変装していたことになる。楽屋で会った人たちか、警察に紛れ込んでいるか、あるいは、私たちと一緒にいる誰かに成りすましているか……。
はっとする。
『まさか、工藤君…とかじゃないよね?』
メールを送信するのとほぼ同時に、工藤君たちが帰ってきた。携帯を開く素振りがないかじっと見つめていると、私に気がついた工藤君がにっと笑みを浮かべる。よく知っている笑い方だと、彼がキッドであることを確信した。



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