確かめたいこと@



「じゃあ行ってくるな、ひな」
「行ってらっしゃい」
学生は休みだけど、友起君は仕事。自由業も大変そうだ。
賑やかしにテレビをつけて、食器を洗う。今朝は新聞もニュースも、キッドが失敗したことを伝えていた。青子のお父さんのお手柄のようだ。
「まあ、猿も木から落ちるって言うしね」
なぜかキッドに好意的な自分に苦笑しつつ、家事をこなしていく。今日は掃除機をかければ終わりだ。
「…友起君の部屋、最近かけてないよね」
勝手に入るのも気が引けて、あまり掃除に入ることがない。こういう時に片付けてしまうのがいいだろうと判断して、いそいそと部屋へ向かう。
「お邪魔しまーす…」
何となく小声で言ってから、そろりとドアを開けた。
モノクロのベッドにはジャンルを問わない雑誌や各種新聞が散乱している。大きな机にはパソコンやメモ用紙、床と本棚には本があふれていた。以前言った甲斐があってか、衣類はすべてしまってあるようだ。
「ひどいわ、これ」
とりあえず、ベッドや机はいじらない。窓を開けて換気しながら、床だけ掃除機をかける。友起君が帰ってきたら、そろそろ布団を干すように言おう。
「どこにしまってるのよ、この本…棚に入らないじゃない!」
床に散らばっていたそれらは、積み上げるとかなりの高さになった。ちょっと叱ってやらなくちゃ、と考えて、二年前の自分と比べて、随分この生活に慣れたものだと苦笑した。
机の裏に紙袋の持ち手を見つけて、引っ張り上げてみる。きっと中身は空で、いつの間にか落ちていたのだろう……そう、思っていたのに。
「中、何だろう……、え?」
意外なことに中身があった。食べ物や大事なものだったら困るからと覗き込んで、その白さに固まった。
「な、んで……」
埃もかぶっていないそれは、つい最近見たばかりのもので。
「なんで…キッドの服があるの!?」
白いタキシードにシルクハット、青いシャツと赤いネクタイ、そしてモノクルまでそろって、きちんと収まっている。
「どういうこと…?」
まさか、友起君が怪盗キッド? でも、私が会ったとき、友起君は部屋で寝ていたはず。確認はしていないけど、友起君はキッドを捕まえに協力したこともある。キッドであるはずがない。けれどパーティー用と言うには、明らかに人目を避けて隠されていた。
何がどうなっているのかわからなくて、ひとまず紙袋を元に戻した。
「…か、帰ってきたら聞いてみればいいよね」
きっと理由があるはずだ。そう思いながら待っていたのに、夕方帰ってきた友起君は、荷物を持って慌ただしく仕事に出掛けてしまった。持っていったボストンに、あの紙袋の中身が入っているような気がしてならなかった。



[*prev] [next#]
[しおりを挟む/top]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -