hole−1
鬼に浚われた娘は帰ってこんのよ……生きてはな。
真砂子と一緒にお祖母ちゃんの部屋を捜索して、よれよれになった設計図を見取り図とともに見つけた。何十年も前のもので、お祖母ちゃん自身、まだ残っているとは思わなかったらしい。
「良かったですわ。ナルは、科学的かつ合理的に、こうしたことに説明がつけられないか確認するのです」
「石橋を叩いて渡るってことね」
心霊調査というから、胡散臭い祈祷やお札で誤魔化すのかと思ったけれど、科学的に説明できるか確認すると言うのは、意外だけれど、逆に信じる要素ともなる。真面目というより、渋谷さんはトコトン追求したい、研究者タイプだろう。
「あたくしは、今回はそれで片付かないと思いますけれど……」
儚げにため息を吐く真砂子の優しさが嬉しくて、にこりと笑った。
「真砂子はすごいね」
「…そんなことありませんわ」
「ううん、すごいよ。霊が見えて、説得もできて、忙しいのに勉強もしてて、人のことを心配してくれる、優しい人だね」
麻衣だって相談に乗ってくれるし、心配してくれる。綾子さんは昨日のうちに護符を書いてくれた。優しい女性陣に囲まれてとても嬉しいのだ。
「それに、村には同い年の子なんていないし。女の子がいるの、フツーに嬉しい」
「そう、ですの……」
あたしも女性陣の部屋で寝ようかな、と思いながらベースの襖を開けた。
そこにあったのは、束ねられて転がるケーブルと、モニターやらパソコンやらよくわからない機材。電源はどこから取っているのか気になったけれど、聞くのは止めておく。
「渋谷さん、ありましたよ」
二枚の紙を渡すと、渋谷さんは外面を取り繕うか迷った末に、無表情で会釈した。あたしは扱うには微妙な位置らしい。
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