friend−2
浅野さん、と呼ばれてぼーさんたちに断り、麗しの所長様のもとへ行く。
「調査が終わるまでは念のため、こちらの人間と常に行動してください。くれぐれも、ひとりにならないでください」
「はい」
お風呂はどうするのかと薄ぼんやり考えていると、見透かしたように付け足し。
「入浴は脱衣所までは誰かと、上がるまではもちろんお一人で結構です。ただし、上がったら必ずベースに――ここに顔を出してください。遅くとも僕かリンがいますから」
「は、はあ」
抜かりなく、一辺の隙もない。人間性も、調査の方法も。これで歳は一つ違うだけだなんて、世界は広すぎる。
「あ、じゃあ見取り図持ってきます。設計図も、お祖母ちゃんに聞いて」
渋谷さんは頷くと、ベースを設営しているメンバーをちらりと見やる。みんな忙しそうで、付き添いは頼めそうにない。
「原さん、お願いできますか」
「わかりましたわ。…参りましょう、ひなさん」
「え、わ、はい」
真砂子ちゃんは綺麗に微笑むと、あたしの手を取った。小さくて白くて、綺麗な手だ。
「あたくし、あなたとお友達になりたいのですわ。ひな、と呼んでも構いませんこと?」
二人きりで、なぜか手をつなぎながら歩いていると、真砂子ちゃんが会話の口火を切った。
「うん、いいよ」
テレビで見る有名人とは言っても、あたしたちと同じ女の子。特に、渋谷さんを見ているときの潤んだ瞳は紛れもなく、恋する乙女だ。恋バナなら麻衣や綾子さんとも盛り上がれそう。
「では、あたくしのことは真砂子とお呼びくださいまし」
「わかった。よろしくねー、真砂子」
着物の真砂子は、お祖母ちゃんの古い日本家屋に似付かわしい。切り揃えた黒髪も、小柄な体躯も、全部含めてお人形のよう。同性ながらあまりの綺麗さにため息が出てしまう。
「……何があなたに憑いているか、あたくしにはわかりません。けれどナルに任せておけば、きっと大丈夫ですわ」
きっとあなたをお守りします、と真摯な双眸に見つめられて息が止まる。心が澄んだ、優しい子だと思った。
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