▼囁 く 僕 の 吐 息 は 雪 の 匂 い

私はすっかり忘れていたことがあった。この世界について私は何も知らない設定で突き通してきたんだった。実際ほんとに何も知らないから嘘ではない。だって名前とか知ってるけど性格とかその人の事何も知らないし。他の天女もそうなのかと思ったらちがかった。彼女達は暴露ったらしい。私だけなんか「嘘ついてねこいつ。」てなったけどめげずに初期ステータスを強調したのだった。だから会うたび自己紹介されるのか、めんどくさいな。別に私、帰るから名前覚える気なかったんだけど何回も言ってくるやつとかいるから忘れないように心掛けている。あと名乗った上で忘れられるってこの歳の男の子はプライドとか何かが傷ついちゃうと思うので。私ってやさしいなあ。


「おねーさん!おねーさんは天女様ですか?」

「庄左ヱ門君は私が天女様に見える?」

「はい!容子は何処にでもいそうですが突然現れたので天女様だと思います!」

「わあ!凄い素直!でも残念ながら私は容子と同じように何処にでもいる女の子なんだよこんちくしょー」

「名前おねーさんはナメクジ好きですかー?」

「嫌いじゃないよ(好きでもないけど)?」

「時間あるなら俺のアルバイト手伝ってくださいよおねーさん」

「いいけどそしたら駄賃山分けな」

「おねーさんって前の天女様達より心狭いっスね」

「きり丸君世の中ギブアンドテイクなんだよ」


何故私は洗濯物をしながら1年は組に構わねばならんのだ。てか、こいつらなんで縁側に座ってお茶菓子食ったりお茶飲んでるの?誰も手伝おうってきにならないの?なんなの?この洗濯の中に君達のや君等の大好きな先輩の服があるんでしょ?率先して洗おうとか考えないのかよ考えろよ頼むよほんと。じゃぶじゃぶ洗い終えた洗濯物を紐に吊るしていく。その間もよいこのは組達からの質問攻めはやまない。おい、今日習った授業の復習でもしてこいよ!土井先生を喜ばしてやれ!私に会いにこないでさ!寧ろ嫌がらせに感じできたボリボリ音立てて煎餅食うな態とだろ!え。態とだよなあ?カラクリの話とかいいよ兵太夫君。興味無いよカラクリどころかこの世界にだって私に冷たいんだもん。お菓子好きですか?って少なくとも今お前がボリボリ食ってる胡麻煎餅は私の好物だよしんべエ。走るのは得意ですか?だっていやー、全然だめだめ。え?こないだ立花先輩と追いかけっこしてたじゃないかって?いや、あれ焙烙火矢で襲われそうになってたんだよそんな楽しいもんじゃないよアレ。しかも理由が石に躓いたのを私に見られたから。なんてプライドたけぇ男なんだ絶対モテないよあいつ。どうしたの団蔵そんな死にそうな目で見つめてきて算盤できるかって?....いや、できないかな(3級もってるけど)会計委員の仕事させられたらたまったもんじゃないすまん団蔵がんばれ!


「ふー!やっと洗濯おわったー!」

「おーい。おねえさん洗濯終わった見たいだしかいさーん!」

「え?おかしくね?逆じゃね?」

「そうだよ庄左ヱ門!僕たちまだおねえさんに質問してないよ!」


いや、そーゆう事でもないんだけどね。普通さ仕事してる最中は話しかけないで終わってから来るんじゃないの?腹黒いね君。私の中で庄左ヱ門君は要注意人物となったよ。質問の終えた子達は各自どこかに散っていった。私は乱太郎の隣に腰を下ろして伊助君が確保してくれていた煎餅を頬張る。あー、これうまい。伊助君おかんだ。やっぱりあーゆう、団体にはこーゆう気が利く子が一人はいるもんなんだね。勉強になりました。


「名前さんは僕達に手伝ってほしいとか言わないんですね」

「まあ、私の仕事だしね。それに伊助君、お手伝いって言うのは自主的にやるから手伝いって言うのであってやらせるのはこき使うって言うんだよ」

「難しくてよくわかりませんが名前さんは前の天女様よりしっかりしてますね」

「当たり前のことを褒められてなんか微妙な気持ちだけどありがとう」

「名前さんは先輩の中で誰か好いている方がいらっしゃるんですか?」

「金吾君、ありえないこと言わないでくれるかな気持ち悪くて吐きそうになったよ吐かないけど。」

「え!すいません!前の天女様達はそれぞれお目当ての先輩や先輩方全員を恋愛感情で見ていられたので」

「それはそれで怖いな!そうだね好きな人はいないけど私にだって理想像はあるよ。私より強くて私より長生きして短気じゃなくて笑顔が素敵な人。」

「.....僕、今まで名前さんのことよく思っていませんでしたが今すごく好きになりました。」

「君達はほんとに隠すってことしないよね。本人前にして言葉和らげたとしても嫌いだったんだ〜みたいに言うかな普通!わたしだって人間だから傷つくんだよねえ。」


ちょっと反論してみたら金吾君しょんぼりしちゃったから焦った。え、私が悪いみたいじゃないやめてよそんな涙ぐむの!とりあえず「うそうそ!なーんちゃって!だいじょぶわたしのハート岩石並に硬いから」って頭を撫でればげんきになった。辛い。今まで俯いていた虎若君はばっ!と勢いよく顔をあげて私に詰め寄ってきた。うわ、顔近いよちゅーしちゃうよ?


「名前さんは絶対に僕たちを裏切りませんよね!?」

「はあ、そうね約束は守る方です」

「では、約束してください!この学園を荒らすことはしない、僕達を傷つけないと」


なんかこれ酷くない?子供の無邪気さにしてはだいぶ傷つくんだけど。それはそっちは一方的に私を傷つけてはいいけど私は抵抗しちゃだめってことでしょ。ああ、理不尽にも程があるよ。でも、この約束のまないと虎若君納得しそうにないからお得意の愛想笑いをして頷いた。そしたら彼は笑顔になって「ありがとうございます!僕、委員会にいってきます」って言って走りだしていた。人の気も知らないでよ。残った金吾君と伊助君と乱太郎はなんだかしんみりしていた。え、やめてよそんな暗い顔するの。


「名前さん私は貴女が傷つくのもいやですよ」

「優しいね乱太郎」

「なんで乱太郎だけ呼び捨てなんですか?」

「ふふ。体育委員会と同じくらいに名前さんも常連で伊作先輩がいた時に呼び捨てで呼ぶってきまったんだよ」

「あ、あの僕もかまいませんよ呼び捨てで」

「僕もです!」

「うん、じゃあ金吾と伊助あらためてよろしくね」


お茶も全部飲み終えたし、さて、次の仕事にかからなければと雑談会は解散した。みんな、前の天女達に色々されたんだろうなあ。私が話し聞く限りじゃ6人ぐらい居た気がする。自分から天女の話は聞きづらいしなあ。まず、天女って(笑)だよ。ただの女ですからね彼女達も!ちょっと逆ハー狙えちゃったり容子が可愛いだけだろ、あれ?私なんのとりえもないじゃんね。なんで此処にいるんだろうね。忍術学園の門前を掃除してるけどこれもなんの意味があるんだろう。私はなんで、どうして、家族からも友人からも離されこんな敵意剥き出しの奴等と暮らしていかねばならんのか。小松田君が私の目が淀んでいるからと時折心配してくれたが本当のことを打ち明けるわけにもいかずまた愛想笑いでかえした。お手伝いさんだからといって渡された黒い忍び装束。小松田君と一緒だねなんて初日笑いあったがよく考えろよな私のバカタレ。これを着てるってことは私も忍者扱いされんだよ死亡フラクたってるんだよほんと。集めた葉っぱを入れるのに塵取りを忘れたらしく小松田君は取りに行った。もし、今この門から出ていったらどうなるんだろうか。木で作られている門を箒を持っていない方の手で触ってみた。凄い、結構年期はいってるなあ。出ていったらか、そんなことする前にきっと隠れて私を見張っている奴等が捕まえにくるんだろう。脱走劇なんて最初から考えてないよ風呂以外の時間監視されてるのわかってたから。私の着替えシーンをただで見やがってほんとクソ野郎共だよ。そんなにずっと見られていたら私、ずっと笑い続けなければいけないじゃない。お前らに弱いとこを見られまいと私も必死なんだよ。拳を振り上げて門を叩いたと同時に苦無が私の横を通りすぎた。思いっきり叩いたから拳が赤くなって痛い。わたしは刺さった苦無を抜いて投げた奴に向ける。


「下手くそ」

「なんだと?」

「打つならちゃんと此処狙いなさいよ」


私は苦無を奴の足元に投げて自分の手を心臓の上に置いた。今日の監視役はギンギン野郎か。さっきの苦無それ以上の行動をしたら間者とみなすぞと言う警告だ。仕留めようとしたわけじゃないことくらいわかってるけど私だってもう限界なんだ。


「君は此処の最高学年らしいから言っとくけど君達が私を疑っているように私だって君達を信じちゃいない。何か期待をしているようだけど私は君達が望む答えはださないよ。」

「それ、その顔で言う台詞かよ」

「人生笑って過ごさないとやってけないよギンギン」

「馬鹿にしているのか?」

「滅相もない。ギンギン君の睡眠時間を増やしてあげようと気の利く言葉を言ってあげたんだよ。さあ、私の監視なんてくだらないことはおやめなさいな。」

「潮江文次郎だ。バカタレ」


苦無を拾った潮江はすまんと謝罪を述べて忍者らしく木に飛び移り何処かへ消えた。あんな何か言いたげな顔をしたままいなくなるよモヤモヤするじゃないかこっちがさ!塵取を取りに行っただけなのに何故か小松田君は泥だらけになって帰ってきた。どこの戦場からこれとってきたんですか!?



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