▼問題は死しても乙女で居られるか否か

私の名前は名字名前である。産まれは平成で父は普通のサラリーマン、母はスーパーのパートに勤めておりこれといった特殊なことができるわけでも体験があるわけでもない。そんな2人の間に産まれた私は平々凡々の極々普通の学生生活を送り、終了しようとしていた筈だった。だけど何故か室町時代で某子供番組の忍術学園に出演させられ、天女扱い。嫌われたり、好かれたり、振り回され、身に覚えのない恨み辛みを受け止めいつかもとの世界に帰れると信じて生きてきた健気な少女に変わった。ずっと考えていた、何故私がこの世界に来なければならなかったのか。これは偶然か必然かどちらにしろ連れて来たやつをグーで殴りたい。七松君が私をお姫様抱っこした時に感じた凄く懐かしい気持ちやタカ丸さんが私の存在を認め髪を整えた時に何処がで会っていると言った事、他にも沢山あるがつまり私はこの世界に元々存在していた人間であったのだ。そして私が一体どんな人で誰だったのかはもう一人の天女が来てヤンデレ?メンヘラな女が毒牙を巧みに使い陰険鬼畜サラストを殺そうとしたのを庇い負傷した際に知る事になった。もう驚きだよ学園長先生が知ってるんだもの。知ってたなら早く言えよなこっちは悩みすぎて眠れぬ夜を過ごした時さえあるんだぞ。私は血だらけ、立花は笑えるくらい酷い顔をしていて、伊作君はいつもとは違う医者の顔でわたしの止血をしてくれていた。下級生の泣き声が遠くに聞こえて、五年生は私を刺した天女の始末に向かい、他の学年の子達は下級生を慰め、残りの六年生は五年生を追い掛けて何処かへいってしまった。ああ、私、この状況何処かでみたことあるかもしれない。そうだ、私さずっとお礼を言いたかった人がいるんだよ。


「は、ちくん、あのね、あなたにずっと、お礼がいいたかった」

「おい!八左ヱ門はどこだ!!」「竹谷は天女を打倒に向かわれています!!」「四年!誰でもいいから呼んでこい!!」「はい!!」


ああもう騒がしいないいとこだろうが今!!私は普通に話してるつもりなのに何故か喉からゼェーゼェーて聞こえるし痛くないんだけどなあ、死ぬのかな。


「大きく、なるまで育ててくれありがとう、は、ちをおいてっちゃってごめ、ねて伝えて」


どんなに私が我儘を言ったてあなたは笑って許してくれたね。お金がないのを知っているのにご飯に文句つけたり、夜の散歩に行って心配かけたり、一緒にいれて幸せでした。そして、もっとお礼を言いたい人は「せん、ぞ」そんな悲しい顔をしないでいつもみたいに偉そうにしてよ。


「あなたが、私をみつけて、こ、こに連れて来てくれたから、私は愛を知って、人を知り、生きることが好きになっ、た。誰かの役に立つ喜びを、仲間の素晴らしさをしることが、できたの。ありがとうっ。ほ、とう、にありがとう」


立花の手を握ればやっと私が誰なのか気づいたのか瞳から涙を流し、相変わらずお前は馬鹿だと言ったけれど私を優しく撫でてくれた。

それはそればずっと昔のこと、立花仙蔵がまだ水色の井桁模様の制服に身を包まれていた頃の話だ。眉目秀麗で高飛車な彼は例え優秀な1年い組にいても協調性の無さで浮いていた。そんな彼が演習の際森に迷い群れからはぐれてしまった1匹の仔オオカミを見つけた。狩りもしらない、足に怪我を負った小さなオオカミそれが私だったのだ。
最初はやべぇお母さんとはぐれちゃったよこれもう死んだわ〜てとぼとぼ森を歩いていたら目を光らせた山賊に毛皮毛皮と追いかけられその所為で足は怪我するし人間怖い仲間も助けにきてくれないもうやだと自暴自棄になっていた時にサラサラヘアーの少年は現れた。なんだベソかいた餓鬼か。が最初の印象である。無言で私を見ていた彼は急に動き出したと思えば頭巾を外して私に近づいてきたので威嚇したがなんの効果もなさなかった。


「すまない、今はこれぐらいしかしてやれない。私もお前と同じで群れからはぐれてしまったから」


お前もかよ!強がっていても彼の声は震えていた。しょうがないなあ、鼻はバッチリ聞くので彼と同じ匂いがする方向へ誘導してやるか。優しい奴みたいだし、殺されても、恨むけどそれはそれでいいや。
よたとよたと歩く私を抱えて止まる時は一鳴きして右だ左だと首を振ればあれよあれよと彼と同じ服を着た集団に出くわした。仙蔵、仙蔵と彼に群がる仲間たち。なんだちゃんと愛されているじゃないか。そうして彼に身を任せていれば立花を仲間のもとまで連れて行った私は優秀なオオカミと認定され忍術学園で飼われることになった。だがしかし、私はなっとくがいかない。お前たちに使われる気もなければご主人様だと思う気もない。人間は嫌いだ意図も簡単に私達を殺す、仲間も家族も結局私を見つけてはくれなかった。そうこう反抗していても立花は「お前のご主人様だぞ」とか「この馬鹿者め、今日も不貞腐れているのか」と毎日話しかけにきた。そして学年が上がるにつれ私に会いに来る頻度は減っていったし性格も捻くれていったが自分にあった出来事を私に言ってきた。初めて人を殺めた日は私に抱きついてきた、初夜を交わした日も抱きついてきた、恋をしたのだと言った時も、友を亡くしたのだという日も仙蔵は泣き虫で意地っ張りな男だった。そんな彼と居ることが私は好きで生物委員の子達もみんないい子達だった。編入してきたタカ丸に毛繕いされるのも気持ちよかった。七松と一緒に野山を駆け巡ったり、潮江の愚痴を聞いたり、下級生と日向ぼっこをすことやこの学園で送る日々が幸せだった。私にとってこの学園のみんなが大切な存在になっていたのだ。

そして、天女が現れた。誰一人自分達が妖術にかかっているとは気づかないまま、優しい、麗しい、愛されたいと忍術を疎かにし彼女を愛でた。仙蔵もハチも私に会いに来ることはなくなった。下級生も凌駕する憎らしい天女、誰一人としてこの異常さに気づかないのか。そして私の前に学園長先生が現れた「忍術学園を守ってくれぬか」と。学園を守ることはつまり彼らを助けることにも繋がる。体の大きくなった私は人一人くらい楽々と乗せられる。その晩、学園長が書いた仙蔵宛の手紙を天女に渡し、彼女を崖まで連れて行き喉仏目掛けて噛み付いた。しぶとい奴で「私は彼に愛されるまで何度だって現れてやる!!私じゃない女達だって現れる!!あんたの死は無駄死にさ!!きゃはははははは!!」そう言って私の体をがっちりつかんで崖から落ちた。お前がその気なら私だってどんな姿になろうと守りにいく!!

字面に叩きつけられた痛みがあったが即死にはならなかった。不思議なことに一緒に落ちた筈の天女は消えていて、私は翌朝立花達に見つけられ息を引き取った。


「ああ、よかった。守ることができて」


それだけで、ほんとうによかった。立花の頬を人撫でして私は意識を失った。














そして、びっくり。目を覚ますと見覚えのありまくる現代の保健室。そしてなんだこの手の温もりはと確認すれば髪の短いサラストが私の手を握り寝ているじゃないか!!?!
何故!?パラレル!?気づいた彼に問えば「いや、ずっと隣のクラスにいただろうが!」と怒られた。あれ、こっちの世界じゃ初めてじゃない会うの、あれ?仲良くない?私達。
卒業式の別れの歌を歌っている時突然頭痛が来て過去が蘇ったらしい。そして練習を抜け出し私を探していれば女子トイレ前で倒れる私を発見して保健室に運んでくれたらしい。トイレ前で倒れてるって嫌だわ!汚いやないかーい!私がやはり向こうで立花を庇い死んだらしい。学園長先生は私の瞳と他の天女と違う異様さ、性格から気づいたらしい。だから途中から待遇よくなったのか。自分の所為で私が死んだかもしれないのだから気づいても言えないわなそりゃまあ。


「気づけなくて、すまない」

「ほんとだよ。私がどれだけ大変な思いをしたことか」

「名前、私はお前が思っている以上にお前のことが必要なんだ、お前を失うことがあの時何よりも辛かった。自分を恨み、天女を憎しみの対象にすることで自我を保っていたといっても過言ではない。お前が転生し私達の元に戻ってきたというのに、気づいた時には失いどれだけ後悔し悔やみ生涯を過ごしたと思っているんだ。」

「そりゃ私も記憶がなかったんだもん。ただ、立花に生きててもらいたかったんだよ。だから私はあやまらないよ
。」


おいこら、命懸けで守ったのに責められるてちょっと悲しいな。きっと立花は自分を犠牲にするなと言いたかったんだろうけどまさか自分のしたことでその憎しみが姿形を変えた自分にくるとは思いもしなかったけどな。あの出来事は夢だっただろうかと思い刺された胸を確認したら傷は塞がっていたが跡は綺麗に残っていた。どうやら体ごと飛ばされたみたいだ。怪訝な顔をした立花は私の様子を見て制服を捲ってきたので抵抗してみたがまったく効かず傷跡を見られてしまった。


「責任はとる」

「いやいやいや!これは自分で負ったものだし!今の立花には関係ないことだから!」

「関係ないだと?」

「なななんでそこで怒るのかまったく理解できない。」

「口で言わないとわからないのかこの馬鹿が!貴様という奴は4本足だった時の方が賢かったんじゃないのか?」

「なんだとこら!相変わらずの糞野郎でびっくりだよ!!じゃあ、聞きますけど今の私と貴方の関係はなんですか?家族ですか?友達ですか?恋人ですか?会って数分の知り合いでしょうが!それを死んだ過去の話を引きずって「それの何が悪い!例え獣であれ私にはお前が大切だったんだ!卒業する時にはお前と一緒にあの学園を去り生涯を共にするつもりだった!!」

「え、もしかして惚れてたの?」

「阿保が。性欲にかられるほうの愛じゃない家族や友人に向けるものだ。だが、愛しいと思っていた存在が今は女として私の目の前にいる。きっと私はこの先お前以外を好きになることないだろう」

「あの...それって」

「そうだ。名前と私の関係は大いにあるな?」


そ、そうだね。はははっと笑って目を逸らしましたがこの後どうするよ。よくよく気づいたら名前で呼ばれてるし立花仙蔵を男として見たことなど一度もないんだけど、え。例えお前に好きな男ができても私に振り向かせて見せるから覚悟しておけとかサラスト本気だよこれ。私のこれからは一体どうなるのやら。それに皆んな転生しているらしく立花以外にも同じ学校通ってたみたい。ああ、学生生活は終わりを迎えるけど私達の関わりは再スタートするみたいです。




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