▼色 褪 せ た 過 去

なんとゆうか思った通り最悪の状況になった。私たちはただいま全速力で夜の森の中を駆けている。ほんともう私の肺は悲鳴を上げているし正直この女と子供たちを置いていけばなんてこと考えたりもした自分に死ねと一括するつもりでより一層しんべヱの小さな手を強く握りしめた。何か策を考えなければ後ろから追いかけてくる山賊を撒いてどうにかして忍術学園に辿り着く方法を。


「いい加減にあきらめやがれ!!」
「おい!たかが餓鬼と女に何を手こずってんだ!」
「ちっ!なんだあいつらの身のこなし!」
「餓鬼どもはどうかわからないが女はどっちも別嬪ときた!着物も高く売れそうだし体の方も俺たちが楽しんだ後に売り飛ばそうぜ!」


下種な笑い声をあげる山賊に吐き気がわくよ。でも別嬪て褒められた。一緒に逃げてる美人さんのことはスルーしといてあいつら見る目あるな、うん。でもまあ、助かる糸口が見つかった。普通の道で逃げるより障害物のある森の中でのほうがいいといったきり丸の提案であったが正直私は迷子にならないか?と不安に感じていた。そんな不安よりも逃げるが先でこうなってんだけど以外にこの森は行きに通ってきたもので忍術学園への帰り方も私が分かるくらいだこの子達ならすんなり進むことができるだろ。
山賊にバレないよう草と木の陰に隠れしんべヱを乱太郎に託す。私は乱太郎から美人さんを離し彼女の手を振りほどかれないように握りしめた。本当はこいつの脛を蹴って私たちは一目散に逃げるつもりだったさ。だってどう考えてもこいつ怪しいしこの女があらわれて数分で山賊でてきたからね!それでも乱太郎がこの女の手を引っ張って走りだしてしまったので泣く泣く諦めた。乱太郎は私と違って純粋に優しい子だなあ。六年生になってあのドS鬼畜サラストみたいに性格が歪まないことを願うよ。


「乱太郎、きり丸、しんべヱどこも怪我はない?」


首を縦にこくこくと頷いた彼等はきっと私の考えていることが伝わったのだろう。そんな永遠の別れみたいな顔をしないでよ。


「私たちの方が走るのも早いし捕まった時逃げられる可能性も高い、大丈夫だよ。君達は忍術学園についたら学園長先生のお土産をちゃんとわたすんだよ?それ結構高い値段だったからね」


それじゃあ、と彼等に背を向ければきり丸に袖を掴まれ「名前さんバイト手伝ってくれるって約束してください。あと帰ってきたら一緒に寝てもいいですか?」と約束を取り付けられた。あれ、なんか私これめちゃくちゃ死亡フラグたってない?立ってるよねこれ。私、死ぬつもりないよ隣の美人を売るつもりはあるけど。まずこの状況を慌てふためくこともなく受け入れてる一般女子いねーよ!きり丸も戦争孤児なだけあって凛々しい顔して言うもんだからちょっと照れたよね。乱太郎もしんべヱもきり丸に続けて一緒にご飯食べましょうとか薬草取りに行きましょうやお風呂入りましょうってお風呂ありなのかな!?私はありだけどこの時代の犯罪枠とかに入らないかな!?取り敢えずお風呂の件は置いといてまだ私の袖を握りしめているきり丸の頭を撫でて安心させる。


「ああ、だいじょうぶだよ」


ゆっくりはっきりとこの世界で何度も使った魔法の言葉だ。大丈夫って言葉は好きじゃなかった曖昧で不確かなものだから。でも私にはその曖昧さが必要になって自分に言い聞かせるように口から発する。嘘はついてない、それでも本音ではないこの世界では丁度いい。できない約束はしないものさ。彼等は「だいじょうぶ」の意味に気づくことなく私の好きな可愛い笑顔になってくれた。

彼女の手を引いてできるだけ山賊を惹きつけるペースで走る。まだ、追いつかれたらだめだもう少し遠くにいかなきゃ子供達がいない事にバレて戻られたら困るからね。伊達に忍術学園の事務員をやってただけのことはあるな自分!あんな社内イジメと過酷な労働を強いられていたんだこんな森の中でも機敏に動けるようにもなるわ!まったく嬉しくないけどね。それにしてもこの女、疲れている風なのを装っているが汗ひとつかかず私に手を引かれている。一体何が目的で私達に近づいて来たんだろうか?


「ねえ、どうしてあの子達とわかれたの?大人の私達どちらかが残ってあげたほうが良かったんじゃないですか?」


今まで私がだいじょうぶですか?足痛くないですか?て声掛けには沈黙を貫き通してきた女が口を開いた。彼女は私に手を引かれて走っているわけだからどんな表情をしているかは知らないがあの3人を心配した顔でないのは雰囲気で読み取れる。私なんか息も絶え絶えに走っているってーのに空気読めよこのクソアマ!お前みたいな何処の馬の骨かも分からない不審者あの子達に任せるわけないだろ!ほんとはお前だけ別行動してくれれば一番いいんだけどね!でも、優しいあの子達は自分を助けてくれた人や頼ってくれた人、一般人のか弱い女に全て任せたりはしないからあの三人の誰かが自分もお姉さんにお供します!なんて言われたらたまったもんじゃない。君達になんかあったら生き残ったとしても私があの学園から始末されるわ!仮に私が囮役をしこの怪しい女と3人を学園に行かせてみろ間者を安安と招き入れさせただとかあーだこーだ言われてthe endだ。ひたすら走り続けもう自分でさえよくわからない所まで来た。ああ、もう山賊に追いつかれてもいいしこの女がどこのだれでもいいから一息つきたい。少し大きめの木に寄りかかり呼吸を整える為に女の手を離そうとしたが離してくれない。え、もういいけど離してくれてあんただけ逃げればって意味で手をしっしと振れば「どうしてもう逃げないの?」って白々しく首を傾げてきやがる。もう足がガクガクなんですよ小鹿並に震えてるのわからないの?目あるでしょよく見てそんなに私の顔をじろじろみなくていいから足を見て!


「こんだけ走っても息切れ一つしないあんたなら逃げ切れるでしょ。私はもういいからさっさと行って。」

「...一緒じゃなきゃ嫌です」

「人間死ぬときゃ1人なんだからそれが今ってだけだよ」

「ふむ、確かにそうなるね」

「え」


凄いイケメンなおじさんの声になった美人さんは今度は私の手を離して壁ドンしてきた。いや、バックは壁じゃないけどさ。いやだこんなギャップ私だったら絶対欲しくないね。やべ、吐き気してきただってほんともう美人さんからおじさんの声ってこの人オスなのメスなの?オスの方を想像しちゃって特に下半身とかおえげろ。


「君、今とても失礼なこと考えているでしょ」

「いやいやまったくこの世に完璧な人間なんていませんもんね一つぐらいコンプレックスがあったほうが可愛いてもんですよ」

「まあ大体の予想はついていたけどまさかそっちの方に間違われるとは思わなかったなあ」


そう言ってため息をついた彼?彼女?は少し私と距離を置いて七変化をかましてくれた。え、なにこの包帯おっさん。凄いこの残念な気持ちどうしてくれんの。


「そう露骨に残念がられると私の方も傷つくんだが」

「いや、あの、すいません。予想以上に年輩の方だったんでほんとすいません。」


私、このおじさんに美人とか綺麗とか言ってたんだ辛い。でも凄い貫禄ある人だから拗ね蹴って山賊からの逃走計らなくてよかった。あれ、そう言えば山賊は?私の疑問に逸早く気づいたおじさんは「あの山賊なら私の部下達に一芝居打ってもらったんだよ、凄いスリルだったでしょ」ってこいつ綾部の落とし穴に埋めたろうかちきしょー。じゃあ、もう追いかけてこないんだ。


「私が誰だか気にならないのかい?」

「あなたの事を知って私が覚えてる時間あります?」

「思っていたより賢い子みたいだね。まあ、君の前の天女達が異常だったのもあるか。」


なんだかよくわからんがこんなところで立ち話もなんだしうち来る?て誘われたが丁重にお断りさせて頂いた。あそこの倒れた木に座れれば充分です。そして何故だかお姫様抱っこされ運ばれた。え、おじさん紳士!そしてこの人身長高いしガタイもいいぞ、手の平もでかいし私の首なんか片手でしめられてしまいそうだ。


「私はタソガレドキ組頭の雑渡昆奈門。君のことは伊作くんからよく耳にするよ。」

「はあ、伊作くんと仲がよろしいのですか。じゃあ、私の自己紹介は必要ないですね(特にあなたと関わる気ないですし)」


あの野郎私の個人情報をぺらぺらと外部に漏らしやがって一体どんな伝え方したらこんな危機的状況に侵されるんだよ!爽やか王子様フェイスの下で自分の手は汚さずに私を殺るつもりだったてーのか腐っても結局は6年だったか顔だけ野郎。


「伊作くんには借りがあってね。よろしくしてもらってるんだが天女なんてふざけた輩が忍術学園に現れて一時期気まずくなっちゃった時もあったんだよね〜それも天女が私の事を好きになっちゃって嫉妬される感じでさぁモテる男は大変だ」

「へぇー凄い雑渡さん紳士ですもんねー」

「君みたいにあからさま興味ない態度取られるのもおじさん傷つくなぁ」


顔は笑っているが纏っている雰囲気がビシバシ私に突き刺さって痛い。私、この人と1日過ごせって言われたら窒息死するかもしれない。


「最初はめんどくさい事になる前に殺してしまおうと思ってたんだけど、君の学園での監禁生活を見てたら可哀想になっちゃってでもはら人間の本性なんてそうやすやすと分かるもんじゃないから君達のお使いに便乗してタメさせてもらったよ」

「伊作くんのこと愛してるんですね私には分かり得ない世界ですが別に嫌いでもないので大丈夫です把握しました」


つまりお前┌(┌ ^o^)┐ホモォなんだな。よし、伊作に極力関わらないようにしよう。それで新しく出没した私が邪魔なんだよね三角関係とかありえないけど人間狂うと何考えてるかわかんないからねこんなことで殺されてたまるか!!


「いや、君が考えているのは大分間違った答えだからね。私は抱くなら女がいいし惚れるのも穴がある子だよ。そりゃまあ抱いてくれってケツを出されれば入れてやらんこともないけど勃つかなぁ。あ、なんなら証明する?君で」

「あのそんな生々しい所まで言わなくて大丈夫です。なんかすみませんほんと。」

「分かってもらえればいいよ」


まじでこぇータソガレドキ私の貞操も危なかったじゃん今のあいつ本気だったよちょっと息も回復してきたし離れよ。


「で、本題に戻すと名前ちゃんがあんまりの平々凡々の普通の子だったので殺すのはやめたんだ喜んでいいよ」

「わ、わーい!よかったなあー!名前すごいうれしー!」


くそ、どうせ私はどう足掻いても一般庶民だよ!リアル死亡フラグたってたんだ!よかった私はただの雑草で!!凄い良い人そうに笑う雑渡さんに大人しく頭を撫でられているが内心ビックビクだよね。ほんともう誰か来ないかな!乱太郎達まだ忍術学園つかないの!?あ、ついても私を助けにくるようなやついないよね!自分が嫌われてたの忘れてた天然だな私、ほんとわはははは。まじでメンタル折れそう。


「君はいつもそうやって笑って全部流してるのかい?」

「へ、って」


首絞められてますけどおおおお!!何なのこの人二重人格なの?言ってる事と行動が合っとらんがな!く、苦しいし!


「いやあ、キレイだね。そっちの顔の方が私は好きだな」

「ク、ソやろうっ」


人の苦しんだ顔が好きとか雑渡さんてマニアックなのか。やだもう、いくら私が可愛いからって新たな性癖目覚めさせちゃったのかな月明かりに照らされたこの状況、首絞められてなきゃ凄いロマンチックなのになあ。この世界の人間はほんとよくわかんない。ああ、もうダメ意識飛ぶってところで手を離され雑渡さんに寄り掛かるように倒れてしまった。くそ、こんなイカれた野郎に寄り掛かるハメになるとは屈辱だ。呼吸を整えるのに必死過ぎてすぐにはどけないけどなんか背中さすってくれてるしいいかこのままで。


「今まで居た天女達の中で私が殺した子もいるんだよ。忍術学園のタメにしたわけじゃない私が個人的な理由でこの時代から退場してもらったんだ。」

「こ、個人的な理由?」

「私のお気に入りの子が泣いていたんだよ。」

「お優しいんですね雑渡さん」


お気に入りって伏木蔵くんのことだよねロリコンなんだこの人。なんかもうこのおじさん色々やばいわもう。


「伊作くんは君をとても優しい人だといっていた。でも、その子は君の事を仮面を被った様な人だと言っていてね。2人の言っている事がよく分かったよ。人から嫌われる事に対してや死ぬことに関しても指して動揺をしめさないのに、名前ちゃんは一体何をそんなに恐れているんだい?」




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