▼唇 に 、 燻 ぶ る 花 吐 息 、 嗚 咽 混 じ り

お風呂ってなんでこんなに疲れを癒してくれるんだろうね。この湯加減、広さ、私が唯一ゆっくりできる場所。くのたまの子達もいるけど何故か彼女達はわたしに優しい(今は)。来た当初は女子らしい陰湿な嫌がらせを受けていたがたまたま六年生?の花子ちゃん?清子ちゃん?花子ちゃんでいいや。と、風呂がかぶった際に私の体を見て心底怪訝な顔をしながら何故、どうして、そうなった?と浴槽内で質問攻めにあった。いやもう目つきが怖すぎて正直に全部話したよね。この打撲痕が暴君で切り傷は鉢屋で縄の鞭打ちの後がうどんでこの内出血おこしてるのは立花クソ野郎でしょ。それからそれからこの火傷は田村なんちゃらってゆう馬鹿が夜中田村なんちゃの背後にたった私にびっくりして持ってた蝋燭を投げてきたやつ。着物に燃え移って死ぬかと思ったわ。て、ことで只今左手の肘までどーんと火傷だよ。風呂が痛すぎてつらいわ。でも風呂はいりたい女の子だから、私も一応。仕事の汗を洗い流したいから!信じようが信じられまいがどうでもいいぐらいにわたしは逆上せていたのだよ。その次の日からだ、くのたまが私に優しくなったのは。優しすぎて気持ち悪い。皿洗いは手伝ってくれるし傷に効く薬もくれるし、背中の洗いっこするしくのたま一体絶対なんなんだろうね。


「それを私に聞くんですか?」

「シナ先生ならくのたまの考えている事がわかると思いまして」

「わかっていても教えないかも知れないとは考えないの?」

「残業仲間じゃないですか、今日で何度目でしょうねお風呂の時間被るの」

「あなたはほんとう現れた当初からなにもかわらないのね」

「この歳になると人間変わりたくてもそう変われませんよ」


2人で共に湯船につかり、一度も目線を合わせない。私はこの人のこーゆう距離感をもってくれるところが好きだ。私が頼ろうとしたら突き放してくれる、言い方が悪いが私はそれがうれしい。きっと一度でも甘えを許されてしまったら私はこの孤独な場所でシナ先生に依存してしまうかもしれないからだ。それではいけない。今もくのたまの妙な優しさを止めてもらえたらと願いシナ先生に話した。心奥底で同じ性別で私より歳上なシナ先生にまだ未成熟な私は縋ろうとしているのだろう。


「同じ女として相談ぐらいのってあげてもいいわよ」


びっくりした。いつのまにシナ先生は私の隣に移動してきたんだろ。凄いな色気ムンムンだしくの一おそろしや。火傷した左手もいつの間にかシナ先生の手によって湯船から出されていた。正直火傷といってもヘアアイロンで手違えちゃった、テヘペロ程度の痛みなんだよね。やった田村なんちゃらもすぐに火を消してくれたし左腕だけですんだし、伊作の処置もよくひりひりとはするが激痛て訳でもない。相談か・・・頼るのと相談は違うのか?ああ、人じゃなくてこの傷とか?うーん、むずかしいこと言わないでよシナ先生。


「黙ってしまうなんてめずらしいわね」

「ずるいですシナ先生」

「あら、ごめんなさい。困らせるつもりじゃなかったのよ」


優しい目を向けないでシナ先生。私にその目は向けてはいけないよ。くのたまを見る目線で私を見てはあの子たちがかわいそうだ。慈愛を受けるべき人間ではないんです私、卑屈になってるのは分かるけどそれを受け入れるほど図々しくできていないんだ。シナ先生はそれから明日のくのたまの授業の話に変えてくれた。私もそれを受け入れ何事もなかったかのようにふるまうのだ。

聞かなくてもわかっていた。くのたまが私に優しいのは女として生きていけない憐れみなんだと。こんな傷では帰れないとして嫁にもらえることも、遊郭で働くこともくのいちとして生きていくことはできないのだから。もし帰れなければ私は生涯ここに居るしかないそれじゃあまるで死んでいるのと同じだ。生きているのにない自由、ずっと見張られ続け、疑われ、そうなってしまうかもしれないことにくのたまはいち早く気付いた。でも、違う、私は優しくしてほしいのでも同情してほしいのでもない普通に、ただ、あなた達と同じ普通の女の子として接してほしいの。

少し肌寒いけど襦袢一枚で廊下を歩くことにも慣れてきたなあ。最初は寒くて羽織がないと外になんて出れなかったけど。シナ先生とたくさんお話したから体もあったまって早歩きで部屋に戻らなくてもいい。こんなちゃんと夜空を見たのこっちにきて初めてかもしれない。雲一つないから星がよく見える見える。私の時代とは大違いだ、空気も澄んでるし静かな夜。あれ?なんか庭にしゅんしゅん動くの見えるけど気のせいかな。オオカミが脱走でもしたのか、危ないからやっぱり早く部屋にもどろう。うん。すごい見られてなんかないバレてない。忍たまはみんな寝ているはずだしあともう少しで私の部屋だがんばれ耐えるんだ!


「おい」

「・・・や、やあ、七松君」


目をギンギラギンに開いている暴君はそりゃあ、もう獲物を捕食するめで私を見てきてます。まだシナ先生のまなざしのほうが100倍はいいわ。




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