おとぎ話の王子様はお姫様を沢山、沢山愛してくれるのに… お姫様が哀しい時、すぐ会いに来てくれるのに! 私の王子様は逢いに来てくれない。 分かっています。 それは、自分の制です。 暗殺部隊に属していながら敵に捕まった私が悪いんだ。 ヴァリアーが来るはずはない。 来るはずないんです。 役立たずを連れ戻しに来るなど… 有り得ないこと。 「死」を意味しているのだから… おとぎ話のお姫様は王子様が助けに来てhappyendを迎えるけど… 私の王子様はそんな事しないだろう。 第一に、敵なんて王子が来る前に存在しないだろうから。 ジャラッと手の自由を奪っていた鎖が床に落ちて、足についた鎖を外して、血まみれになった密室を後にして、大きな、大きな、屋敷を赤で塗りつぶしていく。 ああ、殴られた頭が痛い。 叩かれた頬が痛い。 蹴られたお腹が痛い。 焼かれた足が痛い。 引っ張られた髪が痛い。 触られたところが気持ち悪い。 汚された体を捨ててしまいたい。 眼の前に居る者を切り裂いて、 撃ち殺して、 殴って、 蹴って、 暴れて… 眼の前も、私も、みーんな赤くなっていく。 このまま、赤く染まってしまえばいいのに。 王子様の好きな赤に染まってしまえばいいのに。 眼の前でもがく手を千切って、 歩けないように足を切って、 逃げようとする者は後ろから刺殺して、 うるさいものは口を切り裂いて、 みーんなバラバラにしてしまおう。 「あははははははははっ!!!!」 あれれ? おかしいな? みーんな死んじゃった。 それでも、足りない、足りない、 もう、何だか分からないものを何度も刺して、 燃やしたり、臓器をすべて取り出したり! どうしてだろう? こんなことしたくないのにな。 王子様、早く来て。 迎えにきて。 そうして、私を切り裂いて。 壊れた心 (迎えにきた。) (助けにきた。) (俺は姫を抱きしめた。) (姫は泣いて、笑ってた。) |