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こんな事やめて?誰も傷つけないで。炎真らしくないよ。だって、昔は、昔はさ…

―ドッ

突き飛ばされた。体制を崩して地面に転んだ、とても痛かった。これで何回目だろ?何回転んだんだろう?膝は擦り傷と打撲でボロボロだ。でも、一番痛かったのは階段で手を振り払われた時だっけ。炎真は優しいからちゃんと心配してくれるんだよね。
今だってそう。倒れた私をあんなに邪魔だって煙たがってたのに傷ついた顔で私を見るんだから。

「そこまでしてツナ君を守りたいの?」

病気に掛った様に苦しそうな表情で私に手を差し出す彼は本当に優しい。なのに人を傷つける。私は彼が一杯傷つけられたのを知っている。だからこそ彼は痛いのと大切な人を失うことが凄く辛いのを知っているのも知っている。

擦り傷だらけの自分の手で彼のしっかりとした手を握る。ほら、そうやって私の手を見てまた苦しそうにする。そんなに苦しいなら病院に電話しちゃうよ?

「幼馴染だからね」

「それだけ?」

「それだけ」

「僕には関係ないよ」

「あるよ」

「名前の話はよくわからない」

「親友だから」

立ちあがっても炎真の手を離さないで握りしめる。顔を顰められても振り払おうとしても今度は絶対離さないから、て、何度思ったんだろう…
だけど、今日はなぜか力強く振り払われる事はなかった。

「僕も名前を親友だと思ってる、ううん。それ以上だとも思ってるよ」

「炎真が苦しいのは嫌だ」

「だから、名前は分かってくれるでしょ?妹と両親を殺されて散々酷い目にあわされて、その憎むべき相手が目の前に居たら…」

「ツナはそんな奴じゃない」

「ツナ君がそんな事しなくても彼にはその残虐な血が流れてるんだ。…それに僕は信じていたんだ」

もし、もし、私の家族が誰かに殺されて散々酷い目にあわされて…そしたら私は炎真と同じ事をするのかな?しないとはいいきれないけど、やっぱり駄目だよ。

「信じていたんでしょ?ツナはそんな事しないって!だったら最後まで信じてよ。私が幼馴染やって来たんだから悪い人じゃないんだよ?私の幼馴染が悪い人て言うんだったら私だって悪い人だよ。最低で、残虐で、卑怯な人間なんだよ!」

「言うなっ!!」

!!恐かった。まるで炎真じゃないみたい。力強く今度は手を振り払われた。もともと叫ばれた瞬間から私の手に力なんてこもってないけど。
ずるい。ずるいよ炎真は…

何でもかんでも自分だけ辛い、苦しいて顔して…
私だってそんな炎真を見るの辛いんだよ。
わからない、わかれないよ。だって私は愛のある家族じゃないから分かることできないんだよ!
目の前で助けてって、呼ばれたって客観的にしか見る事のできない私にはそれを悔やむ事も後悔もできないんだから!

昔はそんな私を「強いね」て言ってくれたじゃない。苦笑いだったけど優しい手で頭を撫でてくれたじゃないか。
今はそんな私を卑怯者て思ってるんでしょ…

「そーゆう思いは僕等にじゃなくてもっと大切な人に向けないよ」

炎真はこの思いを家族に向けろっていいたいんでしょ?
幼馴染と親友を心配して何がいけないの?貴方達は唯一私を心配してくれる人だからこそ、思う事ができたのにっ

いつか来るその日がせめてできるだけ先になるよう

(守りたかったから)
(知られたくなかった)




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