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例えば私が誰かを殺したとして風さんに泣きついたとしよう。風さんは多分私を軽蔑して2度口を聞いてくれないと思う。

「苗字は私を見ていて楽しいですか?」

「動く度に揺れるおさげが愛おしくてたまらないので嫌ではありません」

つまりは楽しくはなく見ていれば私の中にある何かが満たされるのだ。
拳法の稽古だそうだ。日々鍛錬に勤しみ自分を磨く風さんはとても素敵すぎる。それに比べ私は一緒になって体と精神を鍛えるわけでもなく日々自分を甘やかし、こうやって風さんを眺めることだけをしている。
隣に立てなくてもいい。こうやって後姿を見れるだけでいい。

「たまには苗字も一緒に体を動かしませんか?」

「前に私が回し蹴りをして腰を捻ったのをお忘れですか?」

「そう言えばそんな事もありましたね」

汗を流しながらもそんな爽やかに微笑まれては何もしていないのに熱くなってしまうじゃないか。動き回って肌蹴た道衣がこれまた色気を出している。
これで落ちない女などいるんだろうか?いや、やっぱ世界は広いからいるんだろうなぁ。

「でも、私は苗字の看病ができたのでよかったです」

「私も風さんに看病されて嬉しかったですけど。それと同じ位に痛みにも耐えました」

「大丈夫ですよ。苗字の面倒は私が見ますから存分に動き回っても」

「喜んでいいんですか?だけど同じ過ちは繰り返しません」

そう言われてしまうと私はまた例をあげてしまいますよ。
例えば私が物を盗んだりとか、大けがをしたりとか、怪我したライオンを拾ってきたりとか、仕事で失敗しちゃったりと…そう、人を殺しってしまったとしても、それでも私を軽蔑しないで、失望しないで、今のように接してくれますか?

「何事にも臆せず挑んだ方がいいです」

「じゃあ、ちょっとだけやる」

大きくて細くて綺麗な手を差し出され、その手を握る。
…何が遭ってもこの手を差し伸べてくれるのかな?

世界中を愛したなら、不安までも愛せるだろうか

(苗字さんには)
(秘密なんですが…私は)
(人を殺めた事があるんです)

(言えば軽蔑されてしまうと思いますけど)


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