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女の子だったら誰しも運命的な恋に憧れるものではないのでしょうか?一目惚れとか恋い焦がれちゃって晴れて2人は結ばれるとか最高でしょ。
夢見過ぎだとか結構言われるけど私はめげないよ。

「婚約?は?何それ。いつそんなの決まっちゃったの?私の夢はこんな所で終わるのですか?いやいや。そんなわけないよ!勝手に決まっちゃっても諦めないよ私!今までめげなかったんだから!」

お父さんの怒鳴った声を背にして窓から飛び降りる。あ、私ね運動神経は悪い方だけど2階だからそんな高くないので転ぶ位ですむと思う。勝手に決まっちゃった婚約者さんの部下さんごめんなさい。でも、婚約者さんも来ないようだったからおあいこにしまょ。
私の場合はどこぞのファミリーのおめでたいパーティーだと言われて仕方なく来たのよ!今思えば無駄におめかしさせられた時点で怪しむべきだったわね。

お見合い写真?的なのは勿論見てないわ。だって20冊程あったのよ!見る気も失せたわ。あの中のお金と実力があって私のファミリーの利益になるのをお父さんが選んだんでしょうね。どうせ髭の生えた小肥りのジジィでしょ。髪は薄くて髭はこい?逆にしてから出直してきなさい。無駄だけど。

それにしても私はいつまで地面に着地しないのかしら?やっぱ飛び降りる時に目を瞑るんじゃなかった…
最後まで見届けなきゃ駄目だったか。やってしまったなぁ。もしかして死んでしまったとか?…ありえるわ。この先ずっと婚約者から逃げなきゃいけないのならいっそ死んでしまった方がいいのかもしれないけどね。

「おーい。大丈夫か?」

「・・・?」

気がついたら誰かに体を支えられている感じがした。気持ちの悪い浮遊感から抜けたと思ったら今度は嫌ではない人肌の温もりに触れるとは。私が生きてる、て事か。眼をあけると金髪美少年が私をお姫様抱っこしてるだと!?これは、あれじゃないか!私がずっと夢見た運命的な恋に発展しちゃう感じ…のようなドラマチックに始まったちゃうそんな感じですか!?

「あ!ごめんなさいっ!こんな重いのに」

軽ければいいのか?と問われたら悩むけど、軽かったらそれはそれでいいんじゃない。と言えばいいか。

「いや、寧ろ軽いだろ!てか、何で空から降って来たんだ?」

「…空から落ちてきたんじゃなくてあの窓から飛び降りたんですけどね」

私が顔をあげて教えると金髪の美少年は同じように顔をあげて窓を見る。窓から身を乗り出していた父さんはほっとした顔をして室内に入って行った。何だかんだ言って娘は心配なのね…

「なんでまたそんな事…」

苦笑いで私の方に顔を戻した彼は本当にかっこいい。第一印象では白馬に乗った王子様である。

「此処で婚約者と顔合わせをする事になってて」

見ず知らずのイケメンになんて話をしてるんだ!違うんですよ。婚約者よりも私はあなたに会うためにきっと此処に来たんですよ!

「実は俺もなんだよな。そーゆう相手は自分で決めたくて此処で時間潰しててさ」

なんですかこれ!意気投合!?私達の婚約者と貴方の婚約者を結ばせて私達で結ばれません?自分で言っときながらだけどいいアイデアじゃない!

「あの!名前教えてください」

「あぁ!俺はディーノだ。お前は?」

「名前です。お互いがんばりましょうね」

ディーノさんは私の頭に手を置いて撫でると「名前は無茶しすぎだろ!」と笑った。私もそれに釣られて笑う。笑いあっていると上から声がして振り返ると婚約者さんの部下さんがこちらに向かって喋っている。嫌味か!?怒ってるの!?

「ボース!」

…ボス?私?なわけないか。え?どこどこ?あたりを見回してもそれらしき人はいないし…

「だから俺は勝手に決められた婚約は嫌だって言ってんだろ!」

ん?どうしてディーノさんが返事をするの?そんな親しげにあの人と会話しちゃって…

「もしかしてボスですか…?」

「そうだぜ!キャバッローネファミリー10代目ボスなんだ」

父さんが婚約者を決める前に戻って下さい。そしてこれが運命的な出会いに変わればいいのに。

願ったものはたった一度の恋物語

「…もしかして、婚約者?」
「婚約者です」

驚いた顔で指差しながら聞いてきたので私はそれに困った顔で答える。
ディーノさんは二コっと笑って部下の方に向かって「今からそっちに行くからな!」と叫ぶと私に手を差し出す。

「これはもう勝手に決められたわけじゃねーな」
「はい!逃げだしといてよかった」

差し出された手に自分の手を重ねるとギュッと優しく握られ屋敷の中に入っる。
これが最初で最後の恋になればいい。



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