いつも通り仕事から帰ってきて名前が「お帰り」て言ったのは聞こえたけど返事をするのがめんどくさくて無言のまま風呂場に行ってゆっくり湯につかる。この時間が一番いい、戦闘マニアだとか言われているが僕だって疲れる時は疲れる。強い奴と闘いたいだけなのになんであんな雑魚を咬み殺さなきゃならないんだ。まったく手応えがない。だから肩が凝るんだ。 「こんな曖昧な関係終わりにしましょうか」 風呂上がりにビールでも飲もうかと台所により一缶取り出し、名前が座るソファーの向かいに腰を下ろすと目があいまさかの、別れを告げられた。 いや、まだ別れてないか…此処で僕が「あぁ、そう」と言えば結果的にはさよならだけどね。 「ただいま。て、言わなかったの怒ってるの?」 「それだけじゃない」 「ワォ もっと他にあるんだ」 「ありますよ。沢山、沢山!」 「いいなよ。怒らないから」 「じゃあ、遠慮なく」 「どうぞ」 すーっと深呼吸した名前はムスっと不貞腐れた顔で僕を見ている。ビールを飲むのはこの話が終わってからにしよう… 「私は雲雀が仕事から帰ってきたら疲れてるんだろうなと思って風呂だってご飯だって作ってるし欲求不満な時があったりすれば気分が乗らなくても一緒に寝たりするのに、雲雀は自分だけで私の体調が悪いのだって気付かないしおまけに沢田さんとかリボーンさんに呼ばれれば如何わしいお店にまで行っちゃってるし!任務でも他の女とイチャコラしてさ!まあ、抱くまではいってないと思うけど、え?そこまでしてないよね?取り合えずそれは置いといて私の事なんか何一つ考えてないでしょ!夜中に帰ってくる雲雀を待っているのだって地味に褒めてくれないかなとか期待しちゃってるのにさ、朝早く起きて弁当作ればありがとうて言ってもられるのかなてワクワクしてるのに雲雀無言じゃん!何さ!何さ!私は家政婦ですか?ふざけんじゃないわよ!恋人をなんだと思ってんの!?」 どれだけ、溜めていたんだか…「それからそれからね」とまだ続ける名前の話を黙って聞く。 この話だけ聞いてると僕てかなり最低じゃないか… ちなみに、任務の為に近づく女は抱いてないから。君以外僕はあんな事しないからね、信じてよ。 心の中で否定するが、こんなのやっぱ名前にとったらいい訳にしか聞こえないだろう… 「私だけ好きみたいじゃない!私だけ雲雀を見てるみたいでこんなの嫌だ!!これなら付き合ってる前の方が楽でよかったよ」 ポロッと名前に涙が伝り正直ドキっとした。表情には出さないが冷や汗が背中を伝う… この話が終わったらビール飲む前にもう一度風呂に入ろう。 拳を握りしめて立ち上がった名前の手を掴んだら簡単に振りほどかれダイニングテーブルに置いてあった夕食を持って皿ごと流しに放りなげた。 皿の割れる音と食べ物が無残にぐちゃっと音をたてる。あぁ、やってしまった… 喉が乾きすぎてご飯が置いてあるのに気づけなかった。作ってない日があるはずないのに僕は何を言っているんだ? それに名前がここまでする事なんて今まで一度もなかった。言い合いになったり、不満をぶちまける時はあったが言いたい事を云い終えると名前は納得はしていなかったが「今度は許さないから」と言って傍によってきたのに、今度は、今度は、と何度名前の口から聞いたことか… 僕は沢山君に辛い思いをさせてるんだ。 「やりすぎだよ。名前」 息を荒くして涙を流す名前の肩を後ろから掴む。それさえも振りほどかれ君は僕を睨みつける。 そこに愛なんてものはない。僕は彼女を咎める事何かできないのに、どうしてこんなに冷静でいられるんだ?やっぱり怒っていたとしても限度があるんだよ。皿を割るのはやりすぎだ。いや、せっかく作ったのにもったいないじゃないか。 「よくもまぁ、人の事言えるわね。こんだけ言ってるのに謝りもしないでまるで自分は悪くないて顔しちゃってさ!私がどんだけ悩んだかわかるの!?どれだけ我慢してたかわかる!?そりゃ、雲雀は帰ってきたら温かいご飯と抱く女が居て心配することなんかないわよね!私なんか所詮都合のいい女と思ってたんでしょうけど、それも今日で終わりっ!」 台所に名前の声が響く。ちゃんと声は届いているのに目の前の光景を信じたくないばかりに届いた声は頭の中で消えていく。気づいたら口が開いていて止めようにも何故かそんな思考は思いつかない。 「君は僕に謝ってほしいの?僕がこれから、君の事だけを考えて毎日早く帰ってきて体の具合を気にしていればそれで満足?草食動物や赤ん坊に変な店につれていかれても僕はすぐ帰ってくるでしょ。任務で他の女と居ても君が居るんだからそんな事するわけないのもわからないの?結局君は僕を信じれてないだけじゃない。それに、君が家事をしなくても哲がいるんだか、ら」 止めるのが遅すぎた。話すのに夢中になっていたが目の前にいる君は怒りを通りこして落胆していた。 呆然とそこに立ち尽くし涙を流し続ける、抱きしめようと腕を伸ばすと今度は振り払われる事なく胸の中に収まった。 ほんとうはこんな事するべきではないんだろうけど、僕にはこの後どうすればいいのかが、わからない。 ―どんっ 力のない抵抗で僕から離れる、引きもどそうとしたがすっと離れていってしまった。 「ただ、ありがとうって、好きだよって、言ってくれるだけでよかったのにっ」 僕を背にして言い終えると外に飛び出してしまった名前の後を、僕は追いかける事ができなかった。 此処で引きとめたとしても、また同じことを繰り返す。そう自分に言い聞かせて僕は君から逃げた。 「好きになったのも、愛したのも君だけなんだ。 こんなに大切だと思ったのも、愛されたいと思ったのも君だけなんだよ」 甘え過ぎた僕が悪いの?感謝の気持ちを声にださなかった僕が悪いのかい?わかっていながら誤らない僕が全部悪いんだろう。 知ってるよ、全部僕が悪いんだ… 君が望む言葉を僕は言ってやれない (追いかけてきてくれるて、) (期待してたんですよ?) |