抱きしめられた。 キスされた。 何度も寝た。 だけど、彼は言ってくれない。 「愛してる」とは言ってくれない。 ああ、いっそ一つになってしまえばいいのに。 そうしたら楽になれるかな? 「名前!」 貴方が微笑んで私の名前を呼ぶたびに私は凄く傷つくのよ。 私が貴方に「愛してる」て言う度に貴方が哀しい顔をするから私凄く傷つくの。 貴方が私を愛していないことくらい知っているわ。 貴方が私を拒めないのも知っている。 だって貴方はファミリーのボスだから。 部下を守るためならどんな女だって抱けるんでしょう? 私だけを愛してくれる事は、もうないんでしょう? ね?だから、言ったでしょう。 貴方は私を一生愛せない。 絶対に飽きがくるんだもの。 デイーノはかっこいいもんね。 いくらでも女の人を抱けるし愛されるよ。 デイーノは楽よね。 だって愛さなくてもいいんだもん。 ほら、今日も仕事から帰って来た貴方は女の匂いがする。 ねぇ、仕事ってなに? 他の女と寝るのが仕事なの? それとも、私を抱くのも仕事? 「嫌だっ。」 服を脱がせる貴方の手が止まる。 「ごめんな。」 そう言って今度は優しく抱きしめてくれる。 違うのよ。 違う。 「私以外、こうやって抱かないで。」 冷たいの、ディーノ手凄く冷たい。 「何言ってんだよ。お前以外しねーよ」 「本当に?」 「当り前だろ?」 「そう。」 今度は額にキスをして耳元で囁かれたのは「愛してる。」 気持ち悪い。 どこの女に教わったのよ、それ。 一番欲しい言葉、一番気に入らない言葉になった。 朝が来て、貴方はまた仕事にでかけるんだ。 私をおいて、私をだまして、貴方は出かける。 「じゃ、行って来るな!」 「ええ。」 「どうした?元気ないぜ?」 傍によって額に手をあて熱を測る。 「大丈夫だよ。」 そう、微笑みかければ無邪気な笑みを作って「よかった。」てまた、抱きしめる。 「無理すんなよ?不安になるだろ。」 撫でられた頭。 ああ、愛おしい手。 「ディーノ・・・」 「ん?」 手を引き耳元で囁く。 「嘘つき。」 驚いた顔で彼は私を見た。 私は無邪気な笑みで笑った。 彼はその後焦った顔で私を抱きしめた。 「その偽善に吐気がするの」 (他の女を抱く度に) (何度お前に会いたくなったか、) (お前を守るためなら) (いくら汚れたって構わない。) |