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あの女は昔、最強だった。きっと本気で戦ったら負けるんだと俺でも思った程だ。なのにあいつは弱くなっていった。女だから力に限界があってもう強くなれないのかとも考えたがそうじゃない。あいつは自分から凡人になろうとその強さを見せる事をやめたのだ。例え殺されそうになっても決して本気を出そうとはしない。

「ふざけんじゃねぇ」

なのになんで俺達を守ったりしやがったんだよ。ミルフィオーレが突然ボンゴレに急襲をかけてきやがった。俺達は全力で戦ったがボンゴレリングないのと奴等が他のファミリーからリングと匣を略奪して優位だったことから返り打ちにすることはできなかった。本部が陥落すると何故か奴等は交渉の席を用意して十代目を呼び出し話し合いをすることなく撃ったのだ。俺はその場にいながら守る事ができなかった。何が右腕だ、何を偉そうに俺は言っていたんだ!!奴等は十代目の命を奪い次に俺達を殺そうとしてきた。勿論、こちらは勝ち目がなくても戦うつもりだった。例え刺し違える形になっても仇をうってやる!そのつもりだったのに強さは歴然としていて迫りくる炎と銃弾から俺達を守り十代目を連れて逃がしてくれたのは一番認めたくなかった名前だった。女を残していくのは男じゃねぇ!そう思って俺は残ろうとしたが「ツナをこんな場所に1分1秒でもいさせたくない」と悲しい笑みを向けてきたので冷たい十代目を抱えあいつに全てを任せ背を向けた。その後何度も何度も自分にいい訳をした。あの時他の奴等は皆十代目を抱えられるような力は残っていなかった、だから俺はあいつの意を汲んで、だから俺の所為じゃないってな。

「ちゃんと礼くらい言わせてくれよ」

謝らねぇけどありがとうとは言わせてくれ。隠れ家に戻ってきた名前は既に意識を失っていて服もボロボロの上に体中のいたるところに傷があった。撃たれた肩と硬い物で殴られたであろう頭部からも血がだらだろととめどなく流れていた。結構好きだったこいつの細い指も何本か折れていてしばらく名前を抱きしめたまま動けなくなっちまった。

頼むから目をあけてくれよ。今まで名前の思いから眼を背けてきたのは俺がこいつより弱くてちっぽけだったからだ。こいつが本当は普通の女に憧れていたのを知っていた。街の見周りに出たとき自分の着るパンツスーツとすれ違った女のふわふわの白いワンピースを見比べて自嘲的な笑みを零したり、笹川やハルと話して別れる時の哀しい目も強いと期待される重さを嫌がっていたのも俺は全部全部知っていて知らないふりをして戦う事を拒んだ名前を拒絶したんだ。

幾つもの管に繋がれ人工呼吸器のマスクをつけた名前が眼を覚ますのをただじっと見守る事しかできないのか。頬に貼られたガーゼや首元から左腕までまかれた包帯に好きだった細い指にも包帯がまかれ元の太さがわからなくなっている。手を繋ごうにも触ったら傷口が開くと注意を受けて、ほんとうにただ、痛々しい姿を見て待つことしかできない。

その手がどんなに温かいかを知らないで

(失いそうになって気づいたんだ)
(振り払ってきたその手が)
(どれだけ大切なものだったのか)


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