ああ、君は凄い馬鹿だ。大馬鹿者だ。僕がこれほど馬鹿だと思うんだからきっと周りは君をおかしい子だと思ってる筈だ。そんなニコニコずっと笑っていたら頬に筋肉ついちゃうんじゃない?そのうち本当にその顔しかできないようになるかもしれないよ。 「今のは笑うとこじゃないでしょ」 「じゃあ、どうすればよかったの」 本当に馬鹿だね。最初から群れなければいいのさ。そしたらいざこざが起きる事もない。人をそう簡単に信じるから名前はそうやって傷つくんだよ。自分がこいつは強い、1人でも生きてける奴なんだと思った人だけを頼って信じなよ。そう言うなれば僕をさ。 「何で笑って許したりしたのさ」 「そうしなきゃめんどくさい事になるじゃん」 「ふぅん。ムカつくね」 「いいの。もうあの子に何も頼まないから」 君はそうやってまた笑顔で答えた。あの子の信用はなくなった。それを言ってあげればいいのだ。でも、名前はそれを直接、本人には言わない。それは優しさじゃないよ。誰も君にそれを望んでいないだろう。本音を口に出せばいい。あの子の困った顔見たかい?あれでも一応反省はしていたみたいだよ。でも、君が笑って流すからあの子は何も成長できなかった。あの場で名前が怒ってあげればあの子も何か変わったかもしれないのにね。 「怒れば?」 「怒ってるよ」 「どう思ったの」 「あいつ人間として腐ってる」 「そりゃ口に出して言えないわけだ」 まったく女らしさのない文句だ。怒る限度を越して悪口になっている。これじゃあ本人に言えないね。名前の優しさには裏がある。いつから彼女はこんなに歪んでしまった。昔は人を信じて信じて裏切られれば綺麗な瞳から涙を零し、慰めれば無邪気な笑顔を向けてくれたのに今ではその淀んだ瞳で作られた笑みを見せるだけ。その濁りはいつになったらとれるのやら。 「雲雀は変わらないでいてね」 「僕は何も変わらないよ」 「ちょっと変わってってるよ」 「どこが?」 「なんだか優しくなってる」 「ワォ もとから優しいでしょ」 「ううん。昔より私の心配を凄くしてくれるようになったもん」 残酷なまでに君は本当に優しい人間だ。 この言いようのない欠落 (誰にでも笑みを向けないでよ) (君の笑みは僕だけに向けて) |