気づいたら黄瀬の席に座っていた。何で私この席に座ってんだろ?それにしても私が黄瀬の席に座っているのに黄瀬ファンからのあの恨み辛みの視線がこないとはどう言うことだ。此処は夢か夢なのか?思いっきり机に頭をぶつけてみたが痛くない、あ、これ夢なんだ。そうだよねあの金髪シャララモデルの席に理由もなく座っていた日には血祭りされるわ。ただでさえ私は黄瀬と仲良いからあはんな方向に勘違いされ呼び出しやら悪口やらが絶えないのにまったく今時の若いもんは怖い怖い。私も充分若いけど何処で脳みその作りが異なってしまったのか不思議でしょうがないよ。あ、そうそうこの毒舌加減が黄瀬に気に入られた理由でもある。毒舌ていっても性格が捻くれてるとかじゃなくちゃんと友達は居るし間違った事を言った覚えもない真っ当に生きる普通の高校生である。少しうるさいのとモラルのない奴が生理的に受け付けないだけだ。いつまでも此処に座ってるのもなあ、チラっと窓側の自分の席を見ればなんてことでしょう。お花が飾られてるじゃないですか等々クラス内でもイジメられるようになっていたのか私!なんて嫌な夢だよ夢ぐらい楽しいのが見たかったよ!中学から仲のいい友達の席に視線を移せば突っ伏してるし!ちょっともしかして私の所為であんたまでやられてたりしないよね!?許さないよそんなことまじで呪うよ!?近くに寄って話しかけるが反応がないまるで屍のようだ、とかじゃなくて無視はよくないよ〜。ちょっと傷ついちゃったよ名前ちゃん?でも、私と関わりたくないのなら仕方ないかそれであんたが楽しく生きられるならそれでいいや。頭を撫でれば突然顔を上げてきたのでびびった。ゾンビみたいな反応の仕方だなって思ったらリアルゾンビみたいな顔してるじゃないか!そんな目を腫らして涙を堪えようとしているのか眉間に皺を寄せまくってるし口は噛み締めすぎたのか切れちゃってるじゃん。え、ちょまじで誰だよみっちゃんをこんな風にした奴社会復帰できなくなるようにしてやる!!顔をあげたみっちゃんの周りに他の友達も集まってきた。みっちゃんだけじゃないみんなも目や鼻を赤くしてどんよりした雰囲気をだしていた。おいおい、なんだこれは一体なんなんだ?もしかして私の机に花なんか置いてあったから純粋な皆んなは勘違いして私が死んだと思ってるのいやまじで最悪な夢だな!頭に来たから花瓶を机から落として教室を飛び出して行ってやったぜ!後ろから聞こえる悲鳴とか気にしない!やけにリアルな夢すぎて胃がムカムカしてきた。ひたすら走った走り続けた流石夢だこんなに走ったのにまったく息が切れない。おまけに現実より早く動けてる最高かよ。どうせ夢なら黄瀬にちょっかい出してやろうと思ったけど黄瀬が一体どこにいるのかも分からない。うーん。夢なら会いたいと思えば会えるかな?物は試しようだ目を閉じて黄瀬に会いたいと願ってみた、目を開けたら自分の部屋で黄瀬とお母さんが居た。すげぇなこれドコデモドア以上の能力じゃん!黄瀬が家に遊びに来るたび仲良くなってるなあとは思っていたけどここまで親密になっていたとは。二人とも空元気みたいで死んだ目をしながら会話もなしに何処か遠くを見つめている。これ、私声掛けたら空気壊すよね?凄い壊したいんだけどさ。いや、考えるのやめだこれは夢だ「黄瀬」そう名前を呼べば黄瀬はみっちゃんみたいに過剰な反応を見せて私の姿を捉えた彼はこれでもかってぐらい目を見開いてその大きなアーモンド型の瞳から涙を溢れさせた。そりゃもうこれでもかってぐらい抱きしめられる勢いで黄瀬は飛びかかって来たけど黄瀬の手が私に触れる事はなくすり抜けた。え、なにこれ。どうしてさっきみっちゃんを触れたのに花瓶だって、なのにどうしてこんなに傷ついて泣いて苦しそうな黄瀬に触れられないの?私の名前を何度も、何度も呼ぶ黄瀬に母は「どうしたの凉太くん!?」なんて言って駆け寄るのだ。お母さん今の光景を見てなんてこというのさ娘の一大事だよ!


「名前っちが!名前っちがそこに!!」

「凉太くん!?あの子は」

「ほんとに、ほんといるんスよ!名前っちがなのに触れられない!!」

「あの子はもういないのよ」


え?いない?いないってなんだそれはつまりこの夢の中で私は死んだことになっているのか?それじゃあ、あの花瓶は嫌がらせじゃなく私の死を慈しんだもので皆んなの涙は私が死んだ悲しみのもの?やだなあ、なにそれ、もうやだ早く目覚めてよ!いやだ!こんな世界いやだ!さっき同様部屋を飛び出してリビングにいけばお線香の匂いがして居間を見れば仏壇にお花やお菓子がいっぱいあって中央に私の写真が飾られていた。


『私、死んだんだ』


どうして死んだのとか死ぬ前に何をしていたとかそんな記憶はないけどこれは夢じゃなくて私は肉体がないまま此処にいる異質な存在であるのは理解できた。いくら覚めろと願っても起きれないしここまでリアルな夢があるなら私の精神は相当疲れきっているにちがいないだろう。私を追いかけるように降りてきたのは黄瀬で涙や鼻水で顔はグシャグシャな筈なのにそれさえもいい味を出しているってどう言うことだ。どうやら黄瀬にだけ私は見えるらしい。それに私は自分から人や物に触れる事はできるけど触れられることはできないみたいだ。なんだか凄いことになってしまったなあ。取り敢えず私の事を見える黄瀬にお世話になることにした。お世話といっても要するに取り憑くようなものだ。寧ろ私が取り憑いたおかげでこいつについていた女の生き霊を追い払ってやったしやってるしでどっこいどっこいである。それにしても私のためにあんなに黄瀬が涙を流してくれるとは思ってもみなかったなあ、あんなに落ち込んでたのに私が見えるようになった瞬間元気になっちゃったから皆んなびっくりしてたし演技しろっておこっちゃったよねまったく。ずっと自分のそばにいて欲しいとか我儘言ってくるしお前が死ぬまで幽霊やってろっていうとかチクショー。そんな黄瀬の人生潰すようなことしてたまるかここ最近、独り言の多いキセリョになっちゃってるからね。早く成仏したいけど何故私が此処に存在し続けるのか分からないもしかして自分が死んだと理由とか?そんなこんなでうふふあははしたりドカバキと殴り合い(私が一方的に)して1ヶ月は立ってしまった。そしてこの1ヶ月間で分かったことが3つある。一つ目は私は死ぬ前に黄瀬からリョータと名前で呼んでいたらしい。二つ目は黄瀬とは友達ではなく恋人に昇格なさっていたみたいだ。黄瀬も黄瀬で黙ってるんだもん言ってくれればよかったのにって私の記憶がなかったのを黄瀬は知らなかったんだった。道理で好きだの愛してくるだの言ってくる訳だよ。三つ目は私は黄瀬を狂愛するファンによって殺されたらしい。黄瀬がいつもの笑みを消して低い声で誰かから聞き出していたのをこっそり目撃してしまったから確かだ。そして、何故か今私は洛山のバスケ部の部室で赤司君と向き合って将棋を打っている。私のいたずら心がいけなかったと分かっているさだって黄瀬と仲良くなれば必然的にあのキセキの世代とも顔見知りになるじゃん?実際WCで見てるしさ。で、リョータの心配をしに緑間くんとか黒子くん、青峰、さつきちゃんは来てくたけどデカイやつと赤司君来ないから、ね?ほら会いたくなるじゃん?そんでもって高を括って堂々と姿を現したら取っ捕まったとゆうわけですよ。エンペラーアイだから?そうなの?なんなの?


「黄瀬が突然元気になったと言うのはこういうことか」


そうなんですよね。コミュニケーション図らないと消されると察した私は不得意な将棋の試合を申し込んだ。勿論幽霊になったからって強くなれるはずがないぼろ負けである。


「君を殺した犯人は捕まっていない。オレが思うに君は怨みを買って殺されたのではなく黄瀬の為に死んだ。だから君は幽霊になっても黄瀬を守りたかったんじゃないのか?」


私がリョータを庇って死んだ?そんなこと、そんなことあった。付き合って何ヶ月か経ち全体に噂が広まった頃、リョータがストーカーにあうようになったそれも凄い悪質な。警察に届け出を出したがモデルってこともあり軽くあしらわれてしまったのだ。私に被害がある訳じゃないから平気だというリョータは段々とやつれていった。守りたかった、いつも私を気にかけて愛してくれリョータを。だから、私は赤司君に相談したんだ。思い出した、全てそれを悟った赤司君はさっきとは違い少し悲しそうな顔をして「後悔していたんだ、君に犯人を伝えた事を」と目を伏せた。違う、赤司君の所為じゃない赤司君は私にヒントをあたえてくれただけじゃないかそれが確証のある答えだったとしても私が選んだことなんだ。赤司君の言う通り犯人はストーカーの限りを尽くすと接触しようとしてきた。そりゃ勿論リョータを自分だけのものにするためにいつもの元気なチャラモデルである彼なら女の攻撃など簡単に避ける事は出来るだろうが今の彼はきっと無理だ最悪な事が起こる前に自分が止めなきゃ。リョータを待ち伏せする女を呼び止め説得を試みたが話の通じないクレイジーガール過ぎて私の手に負えず「黄瀬くんを傷つけるわけないじゃない!唯ちょっと血と髪の毛をもらうだけよ!」と叫びはじたので諦めて帰ろうとしたらその女は突然笑い始めあんたで実験しようて呟いたかと思えば遅いかかってきたのだ負傷はしたが顔面グーパンチと鳩尾に一発かましてやったのでもう何も起こらないだろうと思った矢先私は突然死を迎えた。謎は解けた、解けたと同時に冷や汗が湧き出た「呪いとは恐ろしいものだな」そうだ呪いだよ赤司君あの女は私で実験しそしてリョータを想い生き霊にまでなって呪い続けたのだ追い払ってもしつこかったのはそれでか!ただ少し疑問が残るなあ、でもそれなら私のすることはただ一つなのである。またオレは君を止めることができないんだなとションボリする赤司君の頭を撫で撫でして感謝していることを伝えさよならを告げる。私はまた愛する人を悲しませなければならないのかと思うと動かない心臓が少し傷んだ気がした。


「名前っち!どこにいってたんスか!凄い探したんスよ!もう、何処にも行かないで」


リョータの元に戻ると彼は一心不乱で私を探していたのか汗だくだった。そして彼の背後には私がいないのをいいことにまたあの女がいた。ああ、そうか人を呪わば穴二つ。あんたは生き霊なんかじゃない私を殺したことにより一緒にこの世と別れをつげた、幽霊だ。連れてかせはしない、絶対に今度はあの時みたいに逃がさない。


『ごめんね、リョータ。お別れの時間が来たみたい。もうこの姿で一緒にいれないや。』

「!いやだ!いやっス!名前っと一緒にいれないなら俺も『リョータ!!』っ!」


言葉は時に契約となり取り返しがつかないことになるだからあの女は笑ったのだリョータの続きの言葉を予想して。そんなこと言わせる前にリョータの口を塞いでやったけどね。この実態のない体は便利だなあ190はあるリョータに自分から顔を近づけることができるんだもの。私とリョータが唇を重ねた事でさらに殺気を出している女はそれでも私の力が強いのか近づいてこれないみたいだ。


『ねえ、リョータ。私の唇冷たいでしょ?この手だって、透ける私より触れる私のがいいでしょ?私リョータに酷いことをしようとしたの。私が死んだ日、ほんとは別れて友達に戻ろう?て言おうとしたんだよ。きっとこれはワガママな私への罰なの』

「な、にいってんスか...名前っちがそんなこと」

『だから私の為に泣いたり傷ついたりしないで。本当に最低な女なんだよ私。きっと生まれ変わっても黄瀬を愛せないしこんな気持ちじゃ巡り会うなんてこともないかもね』

「名前で呼んでよ名前っち」

『私の勝手だけど私と黄瀬はもう友達に戻ったんだよ。幽霊の私にいくら文句言ったてダメだからね。』


黄瀬の元を離れあの女に近づく。黄瀬は私を振り向かせようと触ろうとしてくるけど無駄無駄。


「俺、名前っちの事になると泣き虫でナルシストだしバスケと恋愛上手く両立できなくて寂しい思い一杯させてきたけど、好きな女の嘘くらいわかるっスよ」


だから、なにか理由があるのだって分かるから俺の名前を呼ばなくなるのだけはやめてほしいって馬鹿じゃないの。死んでる人間にそんな小さなお願いしてどうすんのよもう会うことなんかなくなるのに。憎い女の首を鷲掴み捉える。うめき声や暴れてくるけど弱い弱い一杯愛されて痛みも苦しみも喜び悲しみも私のがあんたの呪いなんかより数倍強いんだよ。きっと私が彼女に触れたことにより黄瀬にもこの光景が見えているだろう。目を見開いて、私を必死で呼び止める姿を見ればすぐに分かった。


『ばいばい、リョータ』


上手く笑えていればいいなあ。真っ黒い闇にイカれた女とともに堕ちる堕ちる、きっと何もせずに成仏していれば生まれ変わってリョータと会うチャンスがあったかもしれない。だけどこの女をリョータから引き剥がすには私も一緒に地獄へ落ちるしかなかった。生まれ変わることはないでしょうそれでも私は地獄から貴方を愛し続けています。


ようやく、恋ひ死ぬる


名前っちが連れていったあの女は俺のストーカーをしていたやつだった。ずるいっスよそんな愛し方。俺がやる方じゃんか、かっこよすぎ。今まで重かった肩は楽になったていうのに胸は苦しいままだ、いくら名前っちが自分を忘れさせようとして友達に戻ろうって言ったて好きなものは好きなんスよ!あんた以外もう本気で好きになれそうにない。初めて見た恋人の涙は幽霊の姿で俺はあんな綺麗な涙、人生でもう二度と見ることはないんだろうな。



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