隣に温もりを感じ目を覚ませば名前が俺の隣に座っていた。ああ、また窓に寄りかかり外を見ながら眠ちまったのか。この前また子に風邪をひくからやめろと言われたばっかだったのになぁ。その時お前もまた子の後ろで一緒に怒ってた癖に隣に来ただけで起こそうとはしねぇーのかよ。俺の肩に寄りかかり刀を握りしめた名前はただ黙って前を向いていた。もう一眠りしようと目を閉じれば「晋助、話があるの」と起こす気があるのかないのか小さな声で話しかけられた。


「わたし、銀時と戦いたくないよ」


その言葉を聞いた俺は名前を畳に押し倒し首に両手を添える。おいおい、俺を起こそうにも言っていい冗談ってもの考えろよ。お前の細い首なんて締めるのなんか容易いんだからな。すぐにいつものようにヘラっと笑って「ごめんごめん、うっそーん」って言えよ、なあ。今なら許してやるから。早く言え。


「嫌だよ仲間が傷つくのはもうみたくないよ。ねえ、晋助。わたしあんたの側にいれば仲間の仇を取れると思ったから手を貸したけど今回は違うよ。春雨と手を組む為にヅラや銀時の名前を出した時点であんたにもう私の背中を預けられない」


怯える様子もなく名前は俺を見据える。刀を手放して俺の手を振りほどくか、その刃物で斬り込んでくればいいものをこいつは何故動かない?このままお前を犯すことだってできんだぞ?出会ったガキの頃は身長も力もお前のが上だったが今は全部が逆だそんなことわかってんだろ。こんな至近距離でこの状況を回避するにはお前は俺に刀を向けるしか不可能だ。


「どいて、晋助」

「お前のその余裕はどっからくんだ」

「晋助、わからないの?わたしが余裕に見えるほど周りを見れなくなったの?」


俺が周りを見えなくなっただと?俺はこの左目を失ったあの時から何も見えちゃいねーよ。目を開けばあの時の光景が何度も何度も浮かぶんだよ。お前はあの時、何を感じ、何を俺に期待してついてきたんだ?少し指に力を加えれば名前は唾をごくんと飲み込み酸素を求めようと呼吸を荒くした。自分の危機的状況の判断すらできなくなっちまったのか?


「お前、死にてぇのか?」

「死なないよ。私が死んだら晋助が悲しむもの」

「はっ。俺がお前を殺せねぇとでも思ってんのか?自惚れんなよ」


何が悲しむだお前なんか居なくとも俺は生きてける。この世界に復讐するまでは目の前で仲間が野垂れ死のうが殺されようが突き進むだけだ。手に力を込めれば名前は苦しそうに眉間に皺を寄せて口を開けた。やっと手が動いたと思えば俺の頬を優しく撫でてきやがった。ちげーだろ、お前はまず俺を拒むんだろーが。そして自分を殺そうとした俺を憎んで刀を向ければいいじゃねぇか。首を絞めていた手を離せば赤い痕が残っていた。ああ、首輪みてぇーでいいじゃねぇかと考える自分はもう相当イかれてるみてーだ。


「そんな酷い泣きべそ顔されたら私、死ねないよ」

「泣いてねぇ」

「左目だけね」


ああ、こいつはさっき俺の頬を撫でたのではなく涙を拭っていたのか。涙なんかまだ出やがるのかよ。もう、でねぇと思っていたのにな。名前の上からどき上半身わ起き上がらせて抱き寄せた。大人しく俺の胸に収まっている癖に刀は握りしめたままだ。これがお前の壁の作り方かよ。


「私は仲間が傷つくのは見たくない。だから晋助を傷つけることもしないよ。晋助が私を殺したいと思うなら殺せばいい。私はそれを受け入れる。でもね、それで晋助の心が少しでも痛むなら私は死ねない。もう、あんな顔見たくないもの」


なあ、今、お前が頭の中に浮かべてんのはあの野郎のことだろ?見透かした目をしてお前の瞳にいつも映ってるのは俺が見たあの光景なんだろ。一緒じゃねーか、一緒な筈なのにどうしてこうも向かう先は違うんだろうな。


君の世界にはいられない


名前は次の日いつの間にか鬼兵隊の船を降りていた。捜索せず好きにさせてやれと言ったんだがまた子や万斉はあいつの力は必要だと俺には秘密で探しているらしい。
近いうちまた会う時がくる。仲間を傷つけたくないといっていたがもし、俺と銀時やヅラが刀を合わせることになったらお前は一体どうするんだ?もし俺があの時、お前が作った壁を越えて好きだと伝えていたら何変わったのか?



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